日銀,日本銀行,黒田総裁Photo:PIXTA

アベノミクスの「御旗」
黒田総裁任期中の達成は不可能に

 日本銀行は5月22日の臨時政策決定会合で、小規模事業者に対する金融機関の貸し出しを支援する新制度の導入を決め、4月に続き、外出や営業自粛で売り上げなどが落ち込む企業の資金繰り支援の拡充を打ち出した。

 コロナショックを機に金融政策の軸足を金融危機回避に移す一方で、これまで旗印として掲げてきた「2%物価安定目標の実現」の位置付けは大幅に後退。4月に公表した「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、黒田東彦総裁が2期目の任期を終える23年4月までには目標は達成できないことになった。

 安倍首相に迫られて物価目標を導入してから約7年半、日銀は「2%」達成を金科玉条に、物価を押し上げようと景気拡大局面でも緩和を続けてきたが、マイナス金利に加え、管理相場化した国債や株式市場などの異常な金融状況と形骸化した物価目標だけが残った形だ。

22年度の物価上昇率見通し
「0.4%~1.0%」にとどまる

 公表された4月の政策決定会合の議事録からは、物価目標の達成がいつになるのかも見えない審議委員らの苦悩が伝わる。