多くの方の家計相談を受けていると、「現実を見てほしい……」と思わされる人に出会うことがあります。収入に見合わない暮らしを望む人、減収をなかなか受け入れられない人など、さまざまです。将来どうなるかの想像がつかないために、現状を無視した「理想の暮らし」をしたがるのかもしれません。
現実を見ずに家計状況が悪化してしまった方は、その状況を改善するための方向付けをしていくのですが、自ら状況悪化への一歩を踏み出そうとする人は厄介です。まだ家計状況も資産状況も傾いておらず、普通にしていれば将来、何の問題もなく暮らすことが見込めるのに、自分の夢を追い求めて、自覚なく悪化へ向かおうとするのですから。
夫が念願のマイホームのために
妻に無断で土地を購入!?
先日、妻に連れられ家計相談に来た会社員のKさん(39)は、「夫は外で働き、妻は家を守る」という昔の考えを忠実に守ろうとする方でした。夫婦には10歳と8歳の子どもがおり、十分な教育をさせたいと考えていました。Kさんは、このような家族のために一家の主として「しっかりした城(マイホーム)を構えたい」と考え、収入を上げる努力をしてきました。
そうした中で昨年、転職をしました。その結果、年収800万円だったのが、1000万円を超えるまでになりました。「自分はやればできる」という自信を持ったのかもしれません。ちょうどその頃、両親から「家を建てるときには1000万円贈与する」と言われ、がぜんマイホームが欲しい気持ちが高まりました。
当時の貯金は400万円。両親からの1000万円と合わせると、ある程度の頭金も出せそうです。住宅に興味を持った途端、いろいろな売り地が気になり始め、見て歩くようになりました。そして、気に入った土地があったので、近く家を建てるという条件付きで購入の申し込みをしたのです。