同調圧力のせいでみんなが
「35年返済」の住宅ローンを組む?
ベストセラー書籍「宝くじで1億円当たった人の末路」(鈴木信行著、日経BP社発行)を読んだ。実は、タイトルの「宝くじネタ」は1つだけ。他に「友達がゼロの人」「子どもを作らなかった人」「家を買わなかった人」など23のちょっと違う人生の将来を「末路」と称して、日経ビジネスの記者がそれぞれの分野の専門家にインタビューする形でまとめた書籍だ。「悲惨な末路集」と思って買った人には期待外れなのかもしれないが、読後感は意外にさわやかで、私はおもしろく読んだ。
あとがきには、この本の裏テーマは「社会や世間にうまく同調できずに悩んでいる方へのエール」とある。日本は同調圧力が強い国で、何事も目立たず、周囲と同じことをしないと変わった人と見られてしまい、そういった日本の社会的風潮は生き辛い。
人とちょっと違う人生になった人の「その後」を紹介することで、「人と違っても大丈夫。自分が望むことを貫こう」というメッセージを発信している。23の「末路」は、おおむね悲惨ではない。いくつか「やらないほうがいい」例もあるが、いずれにせよ「なるほど~」とうなずきながら読める良書だ。
読み終わって、「定年後まで続く住宅ローンを持っている人がどうなるか」を書きたくなった。今回は先の本のタイトルをちょっとお借りして「65歳以降も住宅ローン返済が続く人の末路」を紹介したい。
老後の生活の安心を得るには、住宅ローンを年金生活が始まる前に完済するのが基本。このことは、老後資金を貯めることと同じくらい重要だ。理想は60歳までに完済、遅くても65歳完済を目指したい。その理由は、言わずもがな。定年後は収入が激減し、住宅ローン返済を続けると収支は赤字に転落する家計が大多数を占めるからである。
しかし多くの人は、ローンを借りる段階で「とりあえず35年返済」とする。完済年齢は、35歳で借りると70歳、40歳なら75歳。理想から大きくかけ離れる。モデルルームで「みなさん35年返済をご利用ですよ」と言われると、みんなそうなら35年返済とするのがいいのかと考える。これも「同調圧力」なのか。