9月にも、「エコカー補助金」の予算枠2747億円が消化されて終了する見通しだ。エコカー補助金とは、一定の燃費基準を満たした新車の購入者に対して、登録車で10万円、軽自動車で7万円の補助金が支給される制度だ。

 現在、政府によるエコカー販売促進策としては、エコカー補助金と、環境基準のレベルによって自動車取得税・重量税等が減免される「エコカー減税」(対象期間は2015年春まで)の二つがある。これらの販売押し上げ効果は大きく、1~7月の新車販売台数は前年同期比52.1%増を記録した。

 自動車メーカー各社は、エコカー補助金終了後の反動減を警戒しており、表向きは業界を挙げて共同戦線を張っている。業界団体である日本自動車工業会を通じて、あらためて「自動車取得税・重量税の廃止」を求めている。

 もっとも、建前と本音は別物だ。年末にかけて、自動車関連税制が抜本改正される予定。水面下では、自社の商品展開に有利な改正で着地するように、メーカー間でつば迫り合いが始まっている。

 各自動車メーカーの利害は一致しない。トヨタ自動車は従来通り、ハイブリッド車(HEV)が優遇されるように、ホンダ、スズキは軽自動車の優遇税制が残るように、といった具合だ。

日産自動車が投入するコンパクトカーの新型「ノート」。低燃費と低価格を売りにしたガソリン車で、ハイブリッド車のシェアを奪取する構えだ

 中でも、今回の改正の焦点は、多様化したエコカーの税制である。三菱自動車「ミラージュ」、日産自動車「ノート」、マツダのスポーツ多目的車「CX-5」。エコカーの本命候補とされたHEV、電気自動車、プラグインハイブリッド車とは一線を画した、既存エンジン(ガソリン車、ディーゼル車)の低燃費車が続々と投入されている。

 従来の改正では、「政財界に豊富なネットワークを持つトヨタの意向が反映されやすい」(自動車メーカー幹部)ため、トヨタの虎の子のHEVが常に優遇されてきた。