6月28日、横浜みなとみらい地区に登場する「日産ニューモビリティコンセプト」。元町商店街、中華街、湾岸エリアを通り約14kmを所要時間45分で走行する

 6月4日、国土交通省がまとめた「超小型モビリティ導入に向けたガイドライン」を受けて、自動車業界では波紋が広がっている。

 この指針では、超小型モビリティ(超小型車)を、1~2人乗り程度、自動車よりコンパクト、優れた環境性能と定義付けているのだが、寸法、走行性能、衝突安全性能といった明確な車両基準が設定されているわけではない。

 業界では、「新カテゴリーの追加で自動車市場が活性化する」(自動車メーカー首脳)と期待を寄せる声が多いが、自動車評論家の国沢光宏氏は「超小型車の指針は、軽自動車の優遇税制見直しの布石だ」と、歓迎ムードに懐疑的だ。

 どういうことか。いまや、軽自動車の安全・環境性能レベルは高く、200万円の軽自動車というのもザラだ。エンジン排気量、車体の制約を除けば、普通自動車などの登録車と遜色ない軽自動車が増加し、税負担の格差を合理的に説明することが難しくなっている。軽自動車のシェア拡大と新車販売台数の鈍化が響き、2011年度の自動車関係諸税は約7.8兆円、5年前と比較して約1.4兆円の減収となった。

 そこで、関係省庁は、軽自動車よりも小さい「超小型車」の車両基準を明確化する過程で、軽自動車の基準を修正する(つまり、軽自動車の優遇税制を見直す)のではないか、とみられているのだ。軽自動車と登録車との税制の歪みを調整することは、結果的に、自動車関係諸税の増額にもなる。

 国交省が超小型車の指針をぶち上げた以上、このカテゴリーに税制優遇・補助金といった“アメ”が与えられることは確実。その分、“ムチ”として軽自動車の優遇政策は後退することになろう。

 目下のところ、超小型車参入に最も積極的なのは日産自動車だ。指針では、超小型車の定義が漠然としていたにもかかわらず、具体的な製品化を前提とした実証実験が進行中だ。