エコカー補助金打ち切り(2010年9月7日)から約2週間、筆者が直接会った国内各地の自動車販売会社の幹部たちは、「市場の現状」と「今後の見込み」について以下のような声を漏らした。
「(打ち切り後の)最初の週末で、かなり不安でしたが、想定していたほどの激しい落ち込みはありませんでした」
「当面、相当厳しくなる…」
「10~12月期は当然落ち込むでしょう。ですが、春先には(販売)は戻ってくるはず。地方では車は生活必需品ですから」
「これから年末にかけて、各メーカーから大きな需要が見込める新型車が出るので、落ち込みはある程度で抑えられるはずです」
その新型車とは、9月発売のスズキ『スイフト』、10月発売のホンダ『フィットハイブリッド』、12月発売の日産『セレナ』などを指す。そのうちの一台、『スイフト』の開発総責任者、スズキ四輪技術本部・第二カーライン長の竹内尚之氏は筆者に対して「エコカー補助金がなくなっても、“走りの楽しさ”を追求したこの車には十分な需要が見込めるはずです」と自信を見せた。
こうした各種発言に見られるように「エコカー補助金打ち切り後」の市場動向について、超ネガティブ、ややネガティブ、ニュートラル、そして希望を持ってのポジティブな声(楽観視とは違う)が並存しているのが実情だ。ただ、自動車メーカー、自動車ディーラー、部品メーカーでも正確な数字に裏打ちされた市場予測を立てているわけではない。皆が抽象論に終始しているというのが実相だろう。
そうしたなか、ある自動車ディーラー経営者が「下取り価格上昇が新車販売を押し上げる可能性がある」と指摘した。これは、「10万円のエコカー補助金」の対象だった、新規購入者からの程度の良い下取り車が中古車市場に流れ込んだため、中古車市場が活性化。結果として中古車相場=下取り価格が上昇というサイクルが発生している、というものだ。一般論で考えれば、「数が増えれば、価格は下がる」とも思えるが、実際に相場上昇の傾向が見られるようだ。