新型コロナウイルス感染症の大流行を受けて、上場承認の取り消しが相次いでいます。
厳しさを増すIPO環境です。こうした状況下で、上場企業予備軍のスタートアップが検討すべき事項について考えます。

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会社と投資家の期待値ギャップが顕在化する

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):新型コロナウイルス感染症の大流行の影響もあり、2020年に入ってからIPOの中止が急激に増えています。

具体的には、2020年4月1日時点で、すでに12社が、上場申請を取り下げています。2019年に上場申請の取り消しを行なったのは通年で3社ですので、相当多いということがわかると思います。

こうした現状を踏まえ、不況下でIPOを目指すスタートアップを取り巻く状況と、こうした局面で取るべき打ち手について考えてみたいと思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):証券会社と会社は上場時の株価の見立てを議論し、上場申請をしているわけですが、これだけ外部環境が変われば、投資家の需要が集まらず、想定していた価格で株が売れない、もしくは売れたとしても上場後の下落懸念が強い、といった状況に陥ります。

つまり、理想的なIPOができないことが明らかになるわけですね。直近で上場取り消し・延期が増えているのは、証券取引所が急にルールを変えたために上場ができなくなったからではありません。

このようなIPOを取り巻く外部環境の急変を鑑み、上場する会社側が自主的に、延期・取り消しの決断をしたということです。

こうした背景には、この環境下でスタートアップのエクイティリスクを取りたい投資家が少なく、会社側と投資家側の期待値に大きなギャップが生じているといった事情があります。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):急激にマーケットが悪化した分、この歪みが大きく出ているのでしょうね。

村上:特にスタートアップは近年、PSR(Price to Sales Ratio。株価売上高倍率)が急激に上昇していました。それ以前と比較すると、この数年で倍というレベルです。こうしたバリュエーションの高騰に対して、コロナ後、極端な切り下げが起きています。

過去10年弱に渡って上げ相場が続いていたため、ファンドマネージャーの中にも初めて下げ相場を経験する人もいることでしょう。急激に顕在化したリスクにどう対峙するのか、非常に混乱しているところだと思います。こうした経緯から、歪みが極大化して現れているのが現状でしょう。