IPOタイミングを選ぶために時間の余裕を確保する
朝倉:参考までにですが、リーマン・ショック(2008年)当時を振り返ると、2008年のマザーズIPO社数が12社だったのに対して、翌年2009年のマザーズIPOはわずか4社でした。2010年が6社。2019年のマザーズ新規上場社数が64社だったことを思うと、実に10倍以上の開きがあったということです。
村上:2009~2010年当時は、銀行や製造業各社が一気に資金調達しており、マーケットの資金供給は実は大きかった。一方で、マザーズへの新規上場が極端に減った理由は、先述したテクニカルな要因に加えて、倍々の急成長を遂げていた会社の成長が急に止まってしまい、事業計画やバリュエーションの前提が大きく変わってしまうケースが多かったからだと思います。
こうなると、会社は戦略を立て直し、改めて成長ストーリー・上場ストーリーを練り直す必要に迫られるため、再度IPOに臨む体勢が整うまでにタイムラグが生じるわけです。
小林:リーマン・ショック時の経験を踏まえて、この時期にIPOを検討している会社は、どのような準備をすればいいと思いますか?
村上:一番重要なのは、IPOするタイミングに対して、選択肢がある状態をつくっておくことだと思います。上場するのであれば、しっかりと準備して、いいタイミングで、最良なIPOをするのが、ステークホルダー全体の願いでしょう。
そのためには、時期を主体的に選べるようにするためのランウェイを確保すること、しっかりとファンダメンタルな事業成長を実現していくことが重要になると思います。
ただ、一方で、ランウェイの確保を意識し過ぎて、事業が加速していない状況も望ましくありません。ランウェイとグロースのバランスを勘案しながら、IPOのタイミングを見定められるようにしっかりと事業成長を実現するに足る財務的な体力を築くことが重要だと思います。