新型コロナウイルスで大打撃を受けた株式市場だが、株価は見事にV字回復した。こうした現状を見て、コロナ禍が落ち着けば「日本経済もV字回復する」とする見方もあるようだ。しかし、日本経済は「V字回復」はしない。その理由を解説する。(トリオアセットマネジメント株式会社代表取締役 奥村 尚)
株も金も好調だが
景気の「V字回復」は現実的か
今、株式も金(Gold)も世界的に好調だ。調整局面で下げることはあるが基本は上り基調である。上がっている前提に経済の回復がある。この上げ方を見る限り、緩やかな回復ではなく急激なV字回復を前提としている。
具体的には、2020年4~6月期の経済はあきらめるとして、7~9月期以降は一気にV字回復するという期待と前提だ。その期待と前提は、現実的なのだろうか。
V字回復論者は、こんな感じのイメージを持っていると思う。
「経済の先行指標である株式相場は、V字回復した。経済もそうなる。見よ、中国も米国も移動制限を解除した途端、旅行業界は大にぎわい、キャンセル待ちで大変だったそうだ。日本も、県をまたぐ移動を解禁した途端、週末は高速道路が渋滞した。今は再び第2波の感染拡大の懸念が高まっているが、コロナ禍が過ぎれば、今まで抑圧された分、それを挽回するために、大いに経済は復活するに違いない」