人間は会食が好きな生き物である。新型コロナウイルス対策でレストランや居酒屋が多くの国で一時閉鎖された。そのときに人々が感じた悲しみは、単に好みの料理が食べられなくなるだけではなく、親しい人々と語らいながら飲食を楽しむ時間が失われてしまうという点にもあったと思われる。
おそらく広大な宇宙のどこかには、食事は生存する上で必要な栄養を摂取するだけで十分と考える知的生命体が存在するだろう。もし彼らが今の地球を観察したら、新型コロナ感染リスクが少々あっても会食したがる人間が大勢いることに驚き、あきれると思われる。
そんなことを考えていたら、2月に出版されたフランスの経済学者ジャック・アタリ氏の著書『食の歴史』を書店で見つけた。これを読むと、実は食および会食は人類の歴史の中核に位置していることが分かる。興味深い逸話を幾つか紹介しよう。