4年生のときに大学を中退し、それ以来引きこもり状態になった息子。そんなわが子を焦らず、慌てず、あきらめずに見守り続けてきた両親がいた。今は家族で一緒に食事をできるようになったご両親は、息子に言われて「ソーシャルディスタンス(社会的距離)」を守ってきた。新型コロナウイルス感染防止の話ではなく、「親の子どもに対する介入の距離感」だ。(ジャーナリスト 池上正樹)
より多くの人が再現できる
引きこもり支援とは?
前回の連載記事『引きこもり生活20年の40代兄が仕事で社会とつながるまで、妹の奮闘記』で、妹が20年以上にわたって引きこもってきた兄へのアウトリーチ(支援対象者への働きかけ)実践記を紹介したところ、引きこもっている本人やその家族らから数多くの反響が寄せられた。
その妹は、家から出られない兄の心情に配慮し、「就労移行支援事業所のリモートワーク」ともいえる自宅の中で仕事ができる手法を編み出し、兄と社会とのつながりをつくりだした。
筆者の元には「妹さん、すごい」という感動的な反応が多かった一方で、「家族がここまでやらなければならないのか…」という、ため息のような声も聞かれた。
より誰にでもできるような、引きこもり支援の手法とはどのようなものか。そして、その手法をどのように共有していけばいいのか。