20年以上、自宅に引きこもっていた40代の男性が、在宅ワークを通じて社会とつながるようになった。そこに至るまでには、本人の気持ちに寄り添いながら支援を続けた家族の奮闘があった。当事者の妹さんが明かしてくれたその詳細な実録をご紹介したい。(ジャーナリスト 池上正樹)
20年以上の引きこもり生活から
在宅ワークという生き方を見いだすまで
「ひきこもり状態」にあるとして公的支援を受けるために必要な医学的診断を受けたがらない、暴力行為や自傷行為が続くなど、対応が難しい行動特性を持った当事者のことで悩み、家族全体が社会的孤立状態に陥るケースは少なくない。そんな家族に関して、周囲に隠したがる親に代わり、兄弟姉妹の立場から相談をしたい。筆者は最近、そんな依頼を受ける機会が増えてきた。
今回は、当事者の妹として、「ひきこもり状態」の支援に必要な医学的診断の未受診者である40代の兄と、長年向き合ってきたゆおさん(41歳、仮名)の事例をご紹介したい。在宅のままでも社会とのつながりをつくることによって、兄が「在宅ワーク」という生き方を見いだすことができたのだという。
ゆおさんが実践してきた兄へのアウトリーチ(支援対象者への働きかけ)とはどんなものだったのか。