実際、写真の説明資料(「財政法第44条に基づく国際流通基金 長期保護管理権委譲渡契約方式資金」)には下記のように書かれている。

「本資金は1951年、パリのICC(International Chamber of Commerce:国際商工会議所)にわが国が加盟したときから始まったものであり、世界銀行(World Bank)、IMF(International Monetary Fund:国際流通基金)、FRB(Federal Reserve Bank:〈 米 〉連邦準備銀行)、BIS(Bank for International Settlements:国際決済銀行)等が参画して、日本の基幹産業の世界大戦後、復興に役立てる事を目的としてスタートし、財政法第44条(特別資金の保有)に基づき運用されるものです。昭和26年、当時の政府、官僚首脳及び学識経験者の意見により、国家の簿外資金として、その有効運用の方途が決められ、組織が創設されました。我が国復興資金として、『償還契約』により、直接、企業、銀行等の外的信用枠を国が借りて、国の財源をつくり、その財源(公的資金)捻出に努力していただく基幹産業企業、銀行の首脳個人を特定し、その使用をほぼ無条件で委任するという『長期保護管理権委譲渡契約方式』(国の財源の運用管理権を貴殿に委任しますという契約)により運用されています。」(原文ママ)とある。

丸の内の超一等地に
自社ビル保有のウソ

 IMFが「国際流通基金」と訳されるなど(正しくは国際通貨基金)、まさに噴飯ものの内容だが、蔵人会長はこの「基幹産業育成資金」の運用をあなたに託すと告げられた際、「『ついにここまでたどり着いたか』と機密保持の契約にも署名した」(7月8日付朝日新聞)という。もともとこの資金の存在を信じていたのだ。

 言うまでもなくこのような資金は存在せず、ご丁寧に財務省もホームページで詐欺に気を付けるように注意喚起している。

 しかし、蔵人会長はすでに冷静ではない。おそらく「近年資金実行先企業名」(下の写真)の資料も見せられたはずだ。

「まさに名だたる企業がこの秘密資金を託されてきた。コロワイドも超一流企業の仲間入りだ」とこれまでの苦労を振り返り、感慨にふけったことは想像に難くない。

 はやる気持ちからか、蔵人会長は信じられない勘違いもしている。交渉の舞台となった東京・丸の内の超一等地にある大規模ビルについて詐欺師らに「自社ビルだ」と説明され信じてしまうのだ。

 このビルは実は「郵船ビル」であることがわかっている。東京駅から皇居に向かう目抜き通り「行幸通り」の左手にそびえ立ち、皇居にも面している。その名のとおり三菱グループの名門企業「日本郵船」の本店所在地である。このビルを所有する会社であれば、確かにすごい資金力だ。

 詐欺師らは1階に「一般社団法人アジア経済協力会議所」なる法人を登記し、逮捕された五十嵐容疑者が代表理事に就任していた。蔵人会長はこの法人の口座にカネを振り込んでいたとみられるが、アジア経済協力会議所なる法人が日本郵船の本社ビルを所有していると思ってしまうことが、筆者はにわかには信じられなかった。