アベンジャーズ、スパイダーマン……数々の人気作品やキャラクターを生み出してきた「マーベル」。実は、90年代には一度経営破綻に陥った過去がある。いかにしてマーベルは再建し、成功を収めたのか。不況時のヒントにもなる、ビジネスモデル転換の成功の秘訣を解説する。(兵庫県立大学教授 川上昌直)
全世界の映画の歴代興行収入のランキングは、いまやアメリカンコミック(アメコミ)の独壇場なのはご存じでしょうか。現在の歴代1位は、『アバター』(2009)の記録を10年ぶりに塗り替え、約28億ドルを稼ぎ出した『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)。2018年公開の前作も約20億ドルで5位にランクインしています。加えて、シリーズ第1作(15億ドル:同8位)も、第2作(14億ドル:同11位)も、そして世界観を同じにするシリーズ作品も上位を占めています。
これらの作品群を生み出した企業こそが、数々のコミックとキャラクターを世に送り出してきた「マーベル」です。その輝かしい成果は、単なる「作品」の良しあしだけにフォーカスすると本質を見誤ります。幾多の苦境を乗り越えた末にたどりついた「ビジネスモデル」にこそ成功の本質があります。マーベルのビジネスモデルへの向き合い方は、国や業種業態を超えて、すべての企業に大きなヒントを与えてくれます。
ビジネスモデルから読み解くと、マーベルの歴史は大きく3つに分けられます。出版を中心としたフェーズ1、ライセンス収益の獲得を目指したフェーズ2、映画製作を決めたフェーズ3です。順に見ていくことにしましょう。