そのことは国会でも質問したが、納得できる答えはなかった。今回の撤回プロセスは、外務省や自民党への事前の相談もない異例の判断となったが、個人的には計画がリセットされたことはよかったと思っている。

 日本政府の突然の決定にもかかわらず、米国側の反応が冷静であることに安堵(あんど)している。鳩山民主党政権の時の辺野古問題のように米国から激しい反発があると、日米関係そのものが動揺する。そうなればどの国が一番、喜ぶかだ。

 実は米国側も最近の北朝鮮のミサイル技術の向上、脅威の質的な変化には危機感を抱き、ミサイル防衛全体を見直そうとしている時だったので、日本の決定には戸惑いつつも、内心歓迎しているのではないか。

弾道ミサイル対応だけでは不十分
「IAMD」網配備で日米協力

――ミサイルの発射時に、推進装置(ブースター)を演習場内に落下させることができないという理由でしたが、それは表向きの口実というわけですか。

 北朝鮮のミサイル脅威に対して弾道ミサイルへの対応だけでいいのかということだと思う。もっと言えば中国の軍事技術や軍備拡張を考えると、弾道ミサイル防衛に特化したイージス・アショアでは不十分ということだ。

 最近のミサイル防衛の考え方は、IAMD(統合防空ミサイル防衛)といって、弾道ミサイルだけでなく巡航ミサイルや極超音速滑空弾、さらには多様な変則軌道のミサイルや無人攻撃機など、あらゆる空からの脅威に陸海空のアセットや衛星で統合的に対応するというものだ。

 まだ一部は開発途上だが、ミサイル発射を適時に探知、追尾する「センサー」とあらゆる軌道のミサイルも迎撃できる「シューター」とを自在に組み合わせた最新鋭のIAMD網を、日米協力で配備した方がいいという判断になったのだと思う。

 北朝鮮が弾道ミサイルの発射実験を繰り返していた3年前の導入の判断が間違っていたというのではないが、専門家から見れば、いずれ弾道ミサイルだけへの対応では限界が来るというのはわかっていた。