日本で繰り返される
海外ブランド戦略の失敗

 海外でのブランド戦略を考えずに、後々に大失敗を招いた実例はあまりにも多い。たとえば、私のマンションから見える東京のランドマークでもあるスカイツリー。その中国語ネーミングは「晴空塔」となっている。

 晴れた日にはそんなに矛盾を感じないが、雨や雪、または霧や雲が多い天気になると、高さ634メートルものスカイツリーは下の半分しか見えない。その度に、「晴空塔」というネーミングのおかしさを痛感した。なぜ雨の日にも晴れの日にも難なく使える「天空樹」にしないのか、と自然に疑問が湧く。

 実は、12年2月12日付朝日新聞の「天声人語」によれば、東京スカイツリーを意味する「東京天空樹」という商標が中国本土では先に登録されてしまったからだ。そこで東武鉄道は「東京晴空塔」という中国語ネーミングを登録する他なかったそうだ。

 日本国内でも、この件を取り上げて中国商人の“名前泥棒”と批判する日本人もいた。私は13年8月15日、ダイヤモンド・オンラインに発表した「中国語の発音重視か、意味重視か 製品ネーミングの成功と失敗」(https://diamond.jp/articles/-/40207)に次のような指摘を書いた。

「しかし、商標登録については、中国も日本も『先願制』を採用している。つまり『早い者勝ち』だ。法的に非難を受けるような問題ではない。私から見れば、むしろ企業のブランド戦略の問題だ」

 この問題は古くて新しい。馬路村も同じ轍を踏んだのだ。

 馬路村農協は、これまで積み上げてきた馬路村ブランドが村や住民にとって守るべきものであると主張するため、近く代理人を通じて特許庁に資料を提出する。こうした自衛行動を起こすのはタイミング的には遅いが、やはり起こすべき行動であり、私は支持したい。

 ただ冒頭に書いた、「1%でも(登録の)可能性があれば対応せざるを得ない。(中略)昭和の時代から積み上げてきたブランドで、何としても守らないといけない」という意識があれば、本来、もっと早く予防線を張るような措置を講じられたはずだ。

 既に8年前、私は脇が甘いと警鐘を鳴らした。しかし、残念ながら、馬路村と馬路村農協のトップの方々の心には届いていなかったようだ。今回のフェイスブックのブロックという短絡的行動も、実はこうした在来の意識の根深さと危機対応の幼稚さを露呈している。

(作家・ジャーナリスト 莫 邦富)