一昔前の会社員は、「仕事は休まずに行くものだ」「サボってはいけない」という矜持を今より強く持っていた。辛抱して苦しんで、そこで丁稚奉公をしているうちに一人前になっていったものです。

 しかし今は、世の中の規則が昔より柔軟になったり、望むものが簡単に手に入るようになり、嫌なことに辛抱強く立ち向かっていけない若者が増えている。これも時代の流れなのでしょうね。昔の丁稚奉公のように、我慢して消去学習ができればいいのですが、今の若者にはそれに耐えられない人も多い。

 もちろん、自分の意思に関係なくフラッシュバックの症状が出て、会社に行かなくてはならないと思っていても、体が動かない患者もいる。そういう若者たちに無理を強いるのは、可哀そうだとは思います。

ちゃんと治療をせずに放っておくと
記憶力も仕事の能力も落ちてしまう

――ちゃんとした治療ができないまま、そうした若者たちを放っておくとどうなるのでしょうか。

 前頭葉の機能がどんどん落ちていきます。うつの情動により扁桃体や海馬が過敏に活動すると、バックファイアーが起き、ますます機能が低下していく。記憶力も仕事の能力も落ちていき、悪くすると人格まで変容し、性格が子どもに戻って幼稚化していくことさえあります。

 世の中には、5~10年病気を患っている患者もいますが、悪い状態のまま脳が固定されてしまっているので、そうした人たちはもう治りにくい。サラリーマンについて言えば、転職すれば治るほど簡単な病気ではありません。多くの患者は結局、仕事を辞めて療養に専念するしかないでしょうね。

――現状では、仕事を続けながら治すことは難しいのですね。

 ケース・バイ・ケースだとは思いますが、今の日本では職場の協力でどれだけ治せるか、疑問があります。本当は、刺激の少ない田舎に転居して、農業をやることなどをお勧めしたい。