◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
 コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
 著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
 本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

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 「音かけていいっすか?」

 エンジニアのAさんが言った。昼間、職場で仕事をしている最中のことである。返事を待つ前に、すでにAさんは自席に置いたスピーカーのボリュームを上げて大音量にし、音楽のリズムに合わせて「ダン、ダダダン、ダン!」とけたたましい音を立ててキーボードを叩き、プログラミングをし始めた。

 私が「ん?」と返事をしたときにはすでに音楽で返事が聞こえない状態になっていた。少しすると周囲から私にメッセージが入り始めた。

「うるさくて仕事になりません。音楽を止めさせてください」

 私はすぐにAさんに声をかけて「なんかうるさいみたいだからヘッドホンをつけてね」とカジュアルに伝えに行った。

「えっ、そうでしたか! それはすみませんでした」

 Aさんは素直な人なので、注意されるとすぐに聞き入れて音楽を止めたのだった。別のある日、Aさんが「なんか服着てると乗らないなぁ、上脱いでいいっすか?」と聞いてきたときには「やめて」と即座に禁止した。

優秀なエンジニアは「変わっている」

 Aさんは入社の仕方そのものから少し変わっていた。「ベンチャーなんてどうせいい加減な技術力しかないだろうから、馬鹿にして遊んでやろう」というスタンスで採用面談の場に現れた。

 だが、私と技術談義を2時間ほどした後に「こんなにちゃんと議論できた人は初めてです」と言って帰っていき、その日の24時過ぎに会社に電話してきて、「明日から入社したいんですけれど、どうしたらいいですか?」と聞いてきた。

 こちらが合格通知を出したわけでもなく、条件の話をしたわけでもなく、現在の会社の退職手続きも何もしていないのに、である。1ヵ月後、Aさんはアプレッソに入社して、入社すると同時にものすごいパフォーマンスを発揮し始めた。

 Aさんは変わっていたが、とても優秀なプログラマーで、アプレッソの事業に大きく貢献してくれた。周囲も彼の優秀さと変わったところの双方を受け止めて仕事をしていた。

 他にも、面白い人のエピソードはたくさんあるが、共通して言えることがある。優秀なエンジニアは変わっている人が多い。だから一般常識で見ると、優秀さの前に「変なところ」が目立ち、「あの人なんなの?」とマイナスイメージを持たれやすい。