産業用電機大手メーカーはこれまで、株式市場からは低調な評価にとどまってきた。それが今、長年の構造改革が終わり、徐々に収益改善が実現しつつある。とりわけ、レガシーの象徴であり、変われない企業と散々やゆされてきたNECが、力強く回復し始めている。それどころか、NECの構造改革のストーリーには、他の電機大手が見習うべき点が多くある。(SMBC日興証券アナリスト 吉積和孝)
視野に入りつつある
営業利益率10%超え
日立製作所やNEC、富士通などの産業用電機大手メーカーは、人員削減や事業の切り離しなど、構造改革を長年繰り返しており、レガシーの象徴として、株式市場からは低調な評価にとどまってきた。
ところが直近2~3年では、従来以上に踏み込んだ構造改革が行われたことによって、短期的なCOVID-19の影響があるものの、長期視点では収益性は改善されつつある。つまり、長年続いた構造改革局面から卒業し、ようやく「普通の会社」になりつつあるのだ。
それでは、今後の注目点は何か。それは、「普通の会社」から「卓越した会社」へ進化できるかどうかである。一つの目安としては、営業利益率10%超へ収益性を高めることができるかが最大のポイントとなるだろう。
長年、営業利益率5%程度にとどまってきた産業用電機大手にとって、営業利益率10%の壁は非常に高い。しかし、筆者は「営業利益率10%超え」の可能性が足元で徐々に高まりつつあると考えている。しかも、その筆頭企業として、これまで産業用電機大手の中では、最も株式市場からの評価が低かったNECに注目したい。
本稿では、「変われないNEC」と批評され続けた同社が、何をきっかけに「普通の会社」に生まれ変わり、これからどのように「卓越した会社」になろうとしているのかを整理したい。NECの変化は、産業用電機大手を含め、伝統的な日本の大企業における変革可能性を占う上でも示唆に富む。