2000年代後半以降、主力のエレクトロニクス事業の不調で輝きを失ったと言われてきたソニー。ところが今、ソニーは見事に復活を遂げ、理想の姿になりつつある。21年4月には社名と組織の変更を予定しており、「ソニーグループ」として再出発する。そんなソニーが遂げた変化と、今後の課題を考察する。(SMBC日興証券株式調査部 桂 竜輔)
アフターコロナ時代の「ソニーグループ」が目指す姿
2021年4月、ソニーは「ソニーグループ」へと社名および組織の変更を行う(内部要因)。同時にテクノロジーの進化(内外要因)とアフターコロナ時代の新常態到来(外部要因)で、ギアチェンジし、さらなる進化を遂げるだろう。
筆者はかねて多くの歴史的ブランドは「変わらない」ことに価値が存在するのに対して、ソニーは「変わる」ことに価値があるという「ソニー進化論」を唱えてきた。実際18年3月期、同社は20年ぶりに過去最高益を更新した。エレクトロニクスの構造改革は一巡し、名実ともにハードとソフト、ネットワークとコンテンツを組み合わせ、付加価値を継続的に生み出すという、長年の理想を現実にできる土台がようやく構築されたのだ。
また筆者は、前社長時代の「平井ソニー」が、「消費者にWoW!(感動)を与える会社になる」ことを目指したのに対し、現社長の「吉田ソニー」はその「WoW!(感動)を創り出すクリエイターが生きる会社になる」ことを目指していることは、同社設立趣意書にある、「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という“ソニーイズム”とも重なるのではないかという見方を示してきた。
こうした見方に対して吉田憲一郎社長兼CEOは19年1月、「クリエイティビティーとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことを同社の「Purpose:存在意義」とし、その企業文化たる同社の「Values:価値観」を、「夢と好奇心」「多様性」「高潔さと誠実さ」「持続可能性」の4つに設定すると表明。その上で、「人に近づく」という言葉で、同社の「Corporate Direction:経営の方向性」を示した。