できるわけがない。厚労省というブランドを背負う者にとって、「感染症対策をするな」というのは最大級の侮辱であって、決して受け入れられるものではないのだ。たとえるのなら、トヨタ自動車に「若者の車離れが進んでいるから、もう車をつくるのはやめたらどうか」と言うのと同じくらい、あり得ないのである。

「いやいや、戦時中には感染症対策に強いこだわりを持っていたかもしれないが、今の厚労官僚たちにそんなプライドはないだろう」と冷笑する方もいるかもしれない。しかし、戦前から続いている老舗企業などを見ていただければわかるが、組織カルチャーというものは世代を超えて脈々と受け継がれていくものなのだ。今の厚労官僚たちが、陸軍にルーツを持つ厚生省カルチャーを引き継いでいても、何も不思議ではないのだ。

実は「強い日本国」をつくるための
臨床試験に参加させられている?

 そこに加えて、筆者がこのような主張するのは、厚労省の新型コロナへの向き合い方がある。とにかくやたらと情報を自分たちで独占したがる。そして、国民1人1人の健康よりも、日本という国家全体を強くしよういう思惑が垣間見えるところが、「陸軍っぽい」のである。

 実は、戦時中の中国大陸で細菌兵器の人体実験をしていたと言われる陸軍731部隊のリーダー、石井四郎陸軍軍医中将の軍医学校時代の上司は、外でもない小泉親彦だった。さまざまな資料によって、731部隊は満州で結核菌の研究もしていたことがわかっている。一方小泉は、新型コロナの日本の死者が少ないことで注目を集めたBCGの研究を進めていて、陸軍で初めて接種をしたことで有名だ。

 この妙な接点から、実は731部隊は結核撲滅という国策を進めるための「汚れ仕事」をしていた人たちであり、その黒幕は小泉ではなかったという人もいる。敗戦後、小泉はすぐに割腹自殺を遂げてしまっているので、もはや真相はわからない。が、1つだけはっきりと言えることがある。

 それは、この国の感染症対策は「患者のため」「命を守るため」という視点から始まったものではなく、「日本国を強くするため」という考えからスタートしたものであるということだ。そして、それを令和日本で最も色濃く引き継いでいるのが、実は厚生労働省なのだ。

 日本政府は特に目新しい対策をするわけでもなく、かといって検査を増やすわけでもなく、じわじわと国民の間に感染を広めている。果たしてこれがどういう結果に落ちつくのかわからないが、「日本モデル」の感染データは、全て厚労省と国立感染研究所のもとに集められている。

 もしかしたら我々は、知らぬ間に「強い日本国」をつくるために厚労省が仕掛けた壮大な「人体実験」に、参加させられているのかもしれない。

(ノンフィクションライター 窪田順生)