なぜ今、ビジネスの世界で「アート思考」が求められているのか
なぜアートがイノベーションの起点となり得るのでしょうか? Photo:PIXTA

厳しい時代を勝ち抜くため、企業にはイノベーションが不可欠だ。現在、イノベーションを生み出す一つの視点として「アート」が注目されている。なぜアート起点の発想がビジネスに求められるのか。その背景を紐解く。(ライター 正木伸城)

 今の時代、イノベーションは経営に不可欠だとされる。イノベーティブなものは新時代を切り開くフックとして期待され、現今の日本の不況や“わが社”に変化をもたらすものとして嘱望されている。

 そこで話題になっているのが「アート」だ。アートがイノベーションの起点になるという。アートとビジネス、その接点は数年前までさほど注目されなかった。しかし今、にわかに流行している。

 今回はアートがなぜイノベーションに結びつくのか、解説したい。

イノベーションを阻む
「当たり前」「普通」へのとらわれ

 イノベーション論でよく引き合いに出されるのが「固定概念の打破」である。イノベーションという語を定義した経済学者シュンペーターは、同語を「慣行軌道の変更による重心の移動」と表現した。難しい言い回しだが、つまり「今までのやり方、モノの考え方や捉え方=固定概念」を変えることを前提にした言葉だ。私たちが仕事で「普通こうだよね」と、重きを置いて行動してきた(=慣行)その「普通」を変えるのだ。

 経営学者クリステンセンは「優れたイノベーターは、世界のいまの姿を最良の判断材料として今後の世界を予測するのではなく、固定観念にとらわれずに、もっといい方法がなかったかと模索する」と述べた。現状を「当たり前」「普通」と捉えて安住してしまえばイノベーションは生まれない。これは多くの先哲が教えるところでもある。

 だが、固定概念は厄介だ。なぜなら、その多くが「本人に自覚されていない」からである。人は知らぬ間に型にはまった考え方をする。これを踏まえて言えるのは、イノベーションはあくまで「普通『に』考えよう」ではなく「普通『を』考えよう」でなければならないということである。