とある美術教師による初著書にもかかわらず、各界のオピニオンリーダーらやメディアから絶賛され、発売1ヵ月で3万部超という異例のヒット作となった『13歳からのアート思考』。先行きが不透明な時代だからこそ知っておきたい「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、「自分なりの答え」を生み出す思考法とは? 同書より一部を抜粋してお届けする。

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「最も影響を与えた
20世紀のアート作品」第1位とは?

今回から見ていくのは、マルセル・デュシャン(1887~1968)というアーティストによる作品です。

デュシャンは、フランスの文化的な家庭に生まれました。子どものころからアーティストになることを志しており、マティスが通っていたのと同じ、アカデミー・ジュリアンという美術学校で絵画の基礎を学びます(ただし、ビリヤードに明け暮れ、決して真面目な生徒ではなかったようですが……)。アーティストとして出発した初期の作品には、ピカソが示したものの見方に影響を受けた油絵なども見られます。

それではさっそく取り上げる作品をご紹介したいと思います。
デュシャンが30歳のときに発表した《泉》という作品です。

有名な作品なので、「見たことがある」という人もいらっしゃると思います。
「知らない」という方はぜひ、「デュシャン 泉」などでキーワード検索をしてみてください。

日本語では「泉」と翻訳されていますが、英語表記のタイトルは《Fountain》、つまり、「噴水」という意味に近いようです。

実物について、少し説明を加えましょう。
まず、この作品は絵画ではなく立体です。陶器なので、表面はツルッとしています。
サイズは「高さ30.5センチ×幅38.1センチ×奥行き45.7センチ」ですから、両手を使って持ち上げられそうな大きさです。

この《泉》は、美術史上きわめて重要な作品として認知されています。
2004年にイギリスで行われた専門家500人による投票では「(アート界に)最も影響を与えた20世紀のアート作品」の第1位に選ばれたほどです(ちなみに第2位はピカソの《アビニヨンの娘たち》でした)。

……ですが、どうでしょう?
一見して「すばらしい!」とはいいづらい作品だと思いませんか?