▼「爆発的に面白い!! 『図工2』の僕が、現代アートに惹かれる理由がわかった」(中原淳氏/立教大学経営学部 教授)
▼「『考える』の前に『観る』がある。『観る』がなければ『考える』もない」(山口周氏/独立研究者)
▼「美術は『思考力』を磨くための教科だったのか!とわかる本」(藤原和博氏/教育改革実践家)
▼「人間の『知覚』と『表現』という魔法の力を解放してくれる一冊!」(佐宗邦威氏/戦略デザイナー)

論理もデータもあてにならない時代、論理・戦略に基づくアプローチに限界を感じた人たちのあいだで、「知覚」「感性」「直感」などが見直されつつある。そんななか刊行され、各氏がこぞって大絶賛するのが、『「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考』という書籍だ。

現役の美術教師でもある著者が、中高生向けの「美術」の授業をベースに、「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、「自分なりの答え」を生み出し、それによって「新たな問い」を生み出すという「アート思考」のプロセスをわかりやすく解説している。700人超の中高生たちを熱狂させ、大人たちもいま最優先で受けたい授業とは――?

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「模倣」ではなく「再構成」

ピカソが代表作の1つである《アビニヨンの娘たち》を描いたのは1907年、マティスが《緑のすじのあるマティス夫人の肖像》を発表した少しあとのことです。アビニヨンというのはスペインの地名であり、ここには5人の娼婦が描かれています。

そう、カメラがこの世に登場したことによって、「目に映るとおりに描く」という従来のゴールが崩れ、「アートにしかできないことはなにか」という問いが浮かび上がってきた時代です。ピカソは、それまで誰も疑わなかったことに疑問を持ちました。

「『リアルさ』っていったいなんだろう?」

以前であれば、こんな問いについてわざわざ考えるまでもなかったでしょう。なぜなら、ピカソよりもおよそ500年前のルネサンスの時代に、遠近法という明確な「答え」が出ていたからです。リアルさを追求したければ、遠近法の技術を応用すればいいだけのことです。

しかしピカソは、「既存の答え」の延長線上では満足できませんでした。彼は、子どものような新鮮な目で世界を見つめ直し、「自分なりの答え」を探そうとしたのです。

彼は「『1つの視点から人間の視覚だけを使って見た世界』こそがリアルだ」という遠近法の前提に疑問を持ちました。

実際、遠近法が描こうとする世界は、私たちがものを見るときのそれともかなり違っています。

私たちは1つの位置からある対象物を見ているときでも、これまでそれについて得てきた知識・経験を無意識に前提にしています。加えて、そもそも視覚だけを使って見るということもあり得ません。3次元の世界では、つねに五感をフル活用してものごとをとらえているはずです。

そう、私たちは、さまざまな情報をいったん頭に取り込み、脳内で再構成して初めて“見る”ことができるのです。

「半分のリアル」しか描けない遠近法に疑問を持ったピカソは、私たちが3次元の世界をとらえている実際の状態により近い「新しいリアルさ」を模索しました。

そうしてたどり着いたのが、「さまざまな視点から認識したものを1つの画面に再構成する」という彼なりの答えでした。

その結果生まれた表現が、《アビニヨンの娘たち》だったのです。