通説の述べ方

 個人的意見と限定するまで狭くはないけれど、ファクトとするには客観的根拠に乏しいこともよくあります。そこで有用なのが、多くの人が言っていそうなこと、すなわち「通説」です。議論の争点にはならない、ある種、脇役的な情報として投げかけます。

 例えば、「日本人は寿司が好き」という場合。I thinkとするほど不確かなものでもないが、ファクトとするにはデータやソースが手元にない、でもとりあえずは言っておきたい、というときにどうするか。雑談なら「Japanese people love sushi.」でもよいですが、ビジネスの場ではもう少し、断定的な物言いを避けたいところです。そこで有用なのが、「全員・全部と言わない」「どこかで聞いた体(てい)を装う」の2点です。

 まず、「Many」や「Most」などの断りを入れてあえてぼかすことで、意見というよりは事実として見せる作戦です。「Japanese people love rice.」といえば、「それは事実か、意見か? 事実にしても米アレルギーの人もいるだろ」といくらでも突っ込まれそうですが、「Most Japanese like rice.」であれば反論できません。そこから話を展開させていくことができるのです。

 Most Japanese people love sushi.
  (Mostをつけることで断定を回避 ) 
 Many Japanese people love sushi.
 (Mostはほぼ全員のニュアンスがあるが、manyは単に多数であり、過半数でなくてもよいので和らぐ )

 次に、どこかで聞いた体を装う方法です。自分の意見ではないけれど、わりと多くの人がサポートしているよ、という雰囲気を醸し出すわけです。

 People say that Japanese people love sushi.
 →日本人は寿司が好きと言われている
 Many people believe that Japanese people love sushi. 
 →多くの人は、日本人は寿司が好きだと思っている

 以上、理路整然と発言するための大前提として必要な、それは意見なのか、事実(ファクト)なのか、通説なのか、発言の性質を明らかにすることについて、ご紹介しました。次回は、論理的表現をするうえで日本人のネックとなっている、接続詞の使い方についてご紹介します。

説得力のある人は、意見と事実を切り分けて話す
児玉教仁(こだま・のりひと)
イングリッシュブートキャンプ株式会社代表
ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー
静岡県出身。静岡県立清水東高等学校を卒業後、1年半アルバイトで学費を稼ぎ渡米。ウィリアム・アンド・メアリー大学を経済学・政治学のダブル専攻で卒業後は、シアトルでヘリコプターの免許を取得後帰国。1997年4月三菱商事株式会社入社。鉄鋼輸出部門に配属され様々な海外プロジェクトに携わる。2004年より、ハーバード経営大学院に留学。2006年同校よりMBA(経営学修士)を取得。三菱商事に帰任後は、米国に拠点を持つ子会社を立ち上げ代表取締役として経営。2011年同社を退社後、グローバル・リーダーの育成を担うグローバル・アストロラインズ社を立ち上げる。2012年よりイングリッシュブートキャンプを主宰。イングリッシュブートキャンプ社代表も務めるかたわら、大手総合商社各社をはじめ、全日本空輸、ダイキン等、様々な国際企業でグローバル・リーダー育成の講師としてプログラムの開発・自らも登壇している。