たとえば、ガタイがいい人に「何かスポーツでもやっていましたか?」と聞く。実はこれは、「体格が良い=スポーツ経験あり」という決めつけによるステレオタイプ化で、たとえ褒めたつもりだったとしても、それ自体が問題となることがある。会社からお茶の間まで、日本にはびこる「ステレオタイプ化」の根はけっこう深い。男女格差指数にいたってはG7でダントツの最下位でもあり、注意が必要だ。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。
ステレオタイプに陥っていないか
国際社会において重要なのは、安心して働ける環境を作ることです。すべてのメンバーをリスペクトし、多様性を受け入れ、誰のどのような意見も尊重され、合理的に運営されることを保証し、一人ひとりが安心して参加できる快適かつ安全な環境を保てるか、ということです。
実は、これが私たち日本人にとって最大の難関の1つかもしれません。
例えば、ガタイがいい人に「何かスポーツでもやっていましたか?」と聞くことはよくあると思います。実はこれは、「体格が良い=スポーツ経験あり」という決めつけによるステレオタイプ化であり、多様性を認めることとは真逆の言動なのです。
しかも、褒めたつもりで言ったとしても、それ自体が問題となりうるのです。
その底流には、「ガタイが良いこと」「スポーツをやっていることは良いこと」で「褒めるべきこと」だという、画一的な価値観があるからです。血液型の話もそうですが、日本ではステレオタイプ化があまりにもカジュアルに日常に溶け込んでしまっています。
日本のビジネスパーソンがよく起こす“事故”に、ジェンダー(性差の)・ステレオタイプにかかわるものがあります。
これは根深い問題で、平成19年に実施された内閣府男女共同参画室の調査によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考え方について、日本人男性の約4.6割、女性の約3.7割が「賛成」「どちらかといえば賛成」の立場を取っています。
これは突出した数字で、例えば韓国では男性約1.7割、女性で約1.3割でした。また、2018年の世界経済フォーラムの男女格差(ジェンダーギャップ)指数では、日本は149か国中110位、G7の国ではぶっちぎりの最下位でした。
問題の根幹にあるものは同調圧力であり、例えば「女性はおしとやかであるべき」といった画一的な価値観の存在です。これは個性を曲げろと言っているようなもので、個性を大切にする「多様性」という考え方と真逆のベクトルを持っているものです。
私たちが「日本では普通の感覚」「日本では褒めている感覚」の何気ない言動が、他国の方々からすると、多様性を重んじない、もっと言うと「他の人を大切にしない」言動だと捉えられてしまうのです。
「女性なのに出世をして素晴らしい」「外人なのに日本語がうまいですね」といった発言がポロポロ出るような環境では、個々人が力を発揮するどころか、できるかぎり関わりたくないと思われてしまうでしょう。
様々な仕掛けで会議体のプライドを築いていこうとするなか、ここでつまずくわけにはいかないのです。多様性をきちんと理解し、どのように振る舞うべきなのかを身につけることは急務です。
その考え方の1つが、ポリティカル・コレクトネスです。