「なんでも没頭できる子」の親がしている4大習慣Photo: Adobe Stock

新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

モンテッソーリも教育の柱に据えた「没頭体験」

 没頭するとは、まるで体の感覚がなくなるくらい、時間を忘れて何かに深く集中することです。このことを、ポジティブ心理学者のミハイ・チクセントミハイ教授は「フロー体験」と呼んでいます。これは一般的には、自分の好きなことをしているときに起こるといわれています。

 チクセントミハイ教授が調べた結果、創造性あふれる芸術家、科学者、スポーツ選手など、さまざまな世界で活躍する人々は例外なく「フロー体験」をしていることがわかっています。

 幼児教育者であり医師でもあったマリア・モンテッソーリ博士も、フローという概念がまだ存在しなかったころから、すでに子どもたちの没頭する様子に注目して観察を続け、没頭できる体験を「モンテッソーリ教育」の柱に据えています。

 また、ハーバード・ビジネス・スクールの社会心理学者、テレサ・アマビール名誉教授は、賞やお金、評価など、周囲から与えられるものよりも、興味や楽しさ、満足感ややりがいなど、内から湧き出るモチベーションが高いほど、人は創造的になるといっています。

 子どもがフロー状態にあるときはどんなときか。じっくり観察してみると、子どものやりたいこと、得意なことが見えてきます。

 では、そうした「没頭」体験を子どもにさせてあげるにはどうすればいいでしょうか?

【その1】「スクリーン」をオフにする

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校で臨床准教授を務めた教育心理学者のシャーロット・レズニックは、子どもの創造性を伸ばすには、環境を「シンプル」にするべきだといっています。

 環境がシンプルだと気が散らず、興味のあることに集中でき、想像力をふくらましたり、考えをめぐらしたりできます。棚やおもちゃのバスケットに布をかけるだけでも効果的です。

 また、テンプル大学の発達心理学者、キャシー・ハーシュ=パセック教授は、98%もの人が「マルチタスクが苦手」であり、集中するにはまわりの刺激やノイズを遮断すべきだといっています。とくにスマートフォンの誘惑は強く、子どもたちはつねにスクリーンからの刺激にふりまわされています。

 何かに没頭したり集中する際は、身のまわりのスマホやゲーム、テレビから遠ざかるようにします。

【その2】「積極的な活動」の時間を増やす

 自由時間の過ごし方で気をつけたいのは、「積極的」か「受身的」かの違いです。チクセントミハイ教授は、テレビを見ながらくつろいだりショッピングモールをぶらぶらしたりすることを否定はしないものの、問題はそれが適量かどうかだといっています。

 受身的なレジャーで自由時間を埋めてしまうと、消費するエネルギーは少なくて済みますが、フローを体験しにくくなるからです。

 チクセントミハイ教授らの研究では、スポーツや趣味など、自由時間に積極的な活動をすることで、受身的な活動をするときに比べてフロー体験が約3倍になることがわかりました。

 また、ドイツでの大規模な調査では、本をよく読めば読むほど、より多くのフロー体験ができる一方、テレビを見ることについては逆の傾向が報告されています。

【その3】急かさない

 ハリウッドの鬼才スティーヴン・スピルバーグの母親は、ろくに勉強もせず、8ミリカメラでおもちゃの機関車が衝突するシーンをフィルムに収めたりするようなことばかりに熱中していた息子を、終始温かく見守り続けたそうです。

 子どもがいったん夢中になり始めたら、その没頭状態を大切にしてあげて、できるだけ「次は◯◯する時間なので早くして」と急かしたり、「もうおしまい」と言って途中で中断させてしまわないようにします。

【その4】「親自身」が没頭できることを見つける

 子どもは親が何かを楽しそうにやっていると興味を示します。そして楽しそうなことは、すぐに真似をします。親が目をキラキラさせて何かに没頭している姿を見れば、子どものほうも自然とワクワクしてくるものです。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)

参考文献

相良敦子『マンガ モンテッソーリの幼児教育 ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』(あべようこマンガ、河出書房新社)

トニー・ワグナー『未来のイノベーターはどう育つのか』(藤原朝子訳、英治出版)
M. チクセントミハイ『フロー体験入門 楽しみと創造の心理学』(大森弘監訳、世界思想社)
森本博行「組織の創造性を高めるマネジメントとは何か テレサ・アマビール ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授」(DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー website, 2019/2/9)

「起業家精神を育むユダヤ的教育観とは」(加藤紀子・文、BUAISO.net, 2010/11/25)
Margarita Tartakovsky, “9 Ways to Support Your Child’s Creativity,” PsychCentral (2018/7/8)