新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学から心理学までさまざまな資料や取材を元に、「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー、「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を紹介する。
1つの習慣「子どもに教えてもらう」
「教えることは、二度学ぶことである」というフランスの思想家ジュベールの言葉にあるように、私たちは人に教えることで、自分の理解不足に気づいたり、あらためて理解を深めたりします。
人に教えるときには「話す」「書く」という動作をともないますが、これは「読む」「聞く」といった動作にくらべ、脳に記憶を定着しやすくするといわれています。
ワシントン大学の心理脳科学者、ジョン・ネストイコ博士は、教えるという「心がまえ」があるだけで、学習効率がよくなるといっています。
彼の実験では、被験者を2つのグループに分け、第1グループには「後で、覚えた情報をテストする」と伝え、第2グループには「後で、覚えたことを別の人に教えてもらう」と伝え、同じ学習をさせました。
実際には、両方のグループが同じテストを受けたのですが、結果は第2グループのほうが良い成績でした。
私たちは「自分が学んだことを誰かに教えなければならない」と自覚すると、新しい情報を吸収する能力が高くなります。つまり、子どもも人に教えることを習慣にすれば、学習効率がアップし、知識の定着が期待できるのです。
では、子どもにうまく教えてもらうにはどうすればよいでしょうか?
子どもに質問する
子どもが取り組んでいる問題を一緒に見ながら、「これってどうやって解くの?」と聞いてみます。答えを聞いても、ちょっとわからないふりをして、さらにくわしく質問してみるのも効果的です。
なぜそうなのかが説明できているかどうかに注意しながら、質問を重ねていきます。
間違っていても指摘しない
子どもの説明が間違っていることもあるでしょう。しかしそこで説明をさえぎって、親が教える側にまわっては意味がありません。
子どもの指示にそのまましたがって、つまずいたところで「これで合ってるかなぁ?」などと質問してみます。
子どもはそこで間違いに気づくと、自分で解決しようとします。できるだけ手を貸さず、自分で考えさせるようにします。
『脳が認める勉強法』(ダイヤモンド社)の著者、ベネディクト・キャリーは、「人に教えることによって、混乱している部分、忘れていたことが、あっというまに明らかになる。これは非常に効果の高い学習だ」と述べています。
さらに、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の心理学者、ロバート&エリザベス・ビョーク教授夫妻によると、あやふやになっていたり忘れてしまっている脳の記憶を掘り起こす作業が大変であるほど学習の力が高まるそうです。
人に教える際はあいまいさが許されないので、この意味でも高い学習効果が期待できます。
感謝を伝える
子どもに教えてもらった後には「よくわかった。わかりやすく教えてくれてありがとう」と感謝を伝えます。これは子どもにとっては「親の役に立てた」という成功体験になります。
脳は一度この快感を得ると、同じ状況を再現しようとし、子どもは「また教えてあげたい」と思えるようになります。
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)
John F Nestojko, Dung C. Bui, Nate Kornell, Elizabeth Ligon Bjork, “Expecting to teach enhances learning and organization of knowledge in free recall of text passages,” Memory & Cognition 42(7) (May 2014)
ベネディクト・キャリー『脳が認める勉強法 「学習の科学」が明かす驚きの真実!』(花塚恵訳、ダイヤモンド社)