日本大学日本大学のラグビー部が問題となっている Photo:Rodrigo Reyes Marin/AFLO

違和感があった5カ月後の記事化

 8月5日の朝日新聞社会面に、日本大学ラグビー部前ヘッドコーチの暴力事件が報じられ、大きな波紋を呼んだ。

「日大ラグビー部前ヘッドコーチ 部員に暴行 未成年に酒強要」というタイトルのほかに、「処分なく辞任 部員側『隠蔽』『アメフト部問題あったのに』」といった見出しの文字が躍っていた。

 さらに、スキンヘッドに爪楊枝が7本も突き立てられた写真と、前ヘッドコーチが部員に送った脅迫的なラインの画像が大きく掲げられていた。

 これを見れば、かなり悪質な暴力と支配的な関係が読者に刻み付けられるだろう。動かぬ証拠がある、釈明の余地はない――。多くの読者はそう感じるだろう。

 その日から、テレビの情報番組では、この報道を元にした話題が報じられた。前ヘッドコーチのさらなる暴行や横暴の実態を、部員と思われる学生たちが生々しく語る声が流された。

 私は、スポーツのパワハラ状況を一掃し、スポーツ環境を改善したいと願って行動しているスポーツライターだから前ヘッドコーチを擁護する立場にない。

 だが、朝日新聞の報道には少なからず違和感を覚えた。

 なぜ前ヘッドコーチの辞任から5カ月もたって、暴力の実態を大きく報じたのか。事実を認識したのが最近だったなら理解もできるが、前ヘッドコーチはすでに職を離れ、居座っているわけではない。それでも報道の必要を感じた理由は何だったのか。