とりわけ外国政府の政治的意図によって引き起こされる「政治リスク」への対策は喫緊の課題だ。

米主導で進んできた
グローバリズムの終わり

 現在の「政治リスク」の最大のものは、米中対立の深刻化だ。

 香港問題を機にした双方による総領事館の閉鎖や政府要人、国会議員の資産凍結といったこのところの制裁合戦を見ると、対立のステージは一段と深刻化した。

 おまけに米国と中国がいわば正反対のグローバル戦略を展開していることが、世界経済の不透明感を強め、国際政治の空洞化、秩序の不安定を生んでいる。

 第2次大戦後、パックスアメリカーナ(米国による平和)といわれるように、圧倒的に力を持つ米国が、世界の政治経済システムを支配してきた。

 世界貿易ルールの基本をなすGATT(関税及び貿易に関する一般協定)体制は1948年に19カ国でスタートし、その後、米国のリードでケネディラウンド、東京ラウンド、ウルグアイラウンドを含め何度も多角的貿易交渉が行われ、世界貿易の自由化が進められた。

 米国の輸入市場・購買力の大きさに、他国は引かれ自由化交渉に応じ、95年にWTO(世界貿易機関)に結実した。参加国は164カ国に上り、まさに地球規模となった。

 しかし、99年にシアトル閣僚会議が開かれた時に筆者は通産審議官として参加したが、反グローバリズムのデモにより夜間外出禁止令が出され、会議は流会した。

 当時の民主党のクリントン政権は市民運動に好意的でデモを取り締まろうとしない。米国はWTOを舞台にした多角的貿易交渉に見切りをつけたと感じ、日本も二国間自由協定(FTA)を結ぶべきと考え、帰国後、シンガポールとのFTA交渉の根回しを始めた。

 パックスアメリカーナのもとでの貿易拡大で、日本をはじめ多くの国が果実を得た一方で、米国は自国の産業競争力の低下もあって貿易と財政の「双子の赤字」に苦しむことになる。

 金・ドルの兌換停止に始まり、「プラザ合意」などによるドルレートの事実上の切り下げ、さらには黒字国に輸出規制や内需拡大を時に強引に求めながら、クリントン政権以降もグローバリゼーションによる国益追求の姿勢は変わらなかった。

 このところは金融、ITなどの競争力のある産業を政府が後押しし、グローバル化のけん引役はGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)に象徴される米国の民間企業が中心になりIT時代のグローバリズムを支配している。