トランプと習近平当初は中国との対立を避けて新型コロナの封じ込めに集中する方針とみられたトランプ大統領。だが、中国による「アメリカ犯人説」もあり、米中対立は激化していった。 Photo: AA/時事通信フォト

アメリカの貿易戦争の
参謀が参戦した意味

「新型コロナウイルスが武漢研究所から漏れた可能性があることが徐々に明らかになっている。だが、これは生物兵器ではなく、対応能力がアメリカと同等か、アメリカより上であることを見せつけるためのウイルスだった」

 国家通商会議トップで、ホワイトハウスの通商戦略ブレーンであるピーター・ナヴァロ氏が、4月19日に放映されたFOXニュース『サンデー・モーニング・フューチャーズ』に出演し、こう断言した。

 さらに次のような発言も行っている。

「ウイルスが中国で広まっているときに、中国政府はWHOと共同で事実を隠蔽して、PPE(the personal protective equipment 医療マスクや防護服など「個人防護具」)の国際市場を独占して利益を上げている」

 ナヴァロ氏はトランプ政権が「米中貿易戦争」を仕掛けたときの、戦略的な支柱となっている人物である。

 その彼が表舞台で新型コロナウイルス拡大における中国の責任を追及したということは、米中貿易戦争が次のフェーズに進んだことを意味する。

 新型コロナウイルス拡大の責任をアメリカに転嫁して、ウイルス禍の混乱に乗じて5G敷設などの世界戦略を進めようとしている中国に、真っ向勝負で阻止に入ったということだ。

 当初、トランプ政権は中国との対立を避けて、新型コロナウイルス封じ込めに集中する戦略をとっていた。だが、明らかに方向転換したとみられる。