メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。

生理の異常は<br />「個性」<br />じゃない!Photo: Adobe Stock

「周期24~38日」「期間3~7日」「量20~140ml」」が普通

 クリニックで感じるのは、多くの人が「私の生理は普通」と思っている、ということです。日本では、「私の生理」を話す機会はあまりないようです。たとえば、何日周期か、どんなナプキンを使っているのか、それを1日何回くらい交換するのか、どこがどう痛むのか……といったことが共有されないまま、個々がそれぞれに「私の生理は普通の生理」と思い、「生理にも個性があり、人によって違う」と思っています。

 たしかに、多少の個人差はあります。痛みひとつとっても、まったく感じない人から、耐えきれずに救急車で病院に運ばれてくる人まで幅広いです。けれど「普通の生理」の枠からはみ出るものについては、「みんな違って、みんないい」とはなりません。血圧が平均値を大幅に上回るか下回るかしたら、それを個性とはとらえず「一度病院で診てもらおう」と思いますよね。生理についても同じように考えてほしいです。

 普通の生理とは、「周期は24~38日」「期間は3~7日間。平均5日間」「一度の周期での経血量は20~140ml」という基準があります。経血量は、市販の昼用紙ナプキンを使用しても1~2時間に一度交換しないと間に合わない、夜間に夜用紙ナプキンをしても漏れて衣類や寝具を汚す……というなら多すぎで、おりもの程度しか出ないのなら少なすぎと覚えておいてください。

たまにしか生理が来ないのは多嚢胞性卵巣症候群の可能性も

 周期については、2、3ヵ月に一度しか来ないのに、それほど気にされていない人も多いです。生理は面倒だから来る回数が少なくてラッキーというところでしょうか。しかし、ホルモン異常により正常に排卵していない可能性も考えられます。基礎体温をつけてみてください。

 多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)(PCOS)という病気の人は生理不順だったり、24~38日周期でも、不安定だったりします。卵巣では男性ホルモンが女性ホルモンの一種、エストロゲンに変換されているのですが、それがうまくいかず、そのまま男性ホルモンとして作用してしまうので排卵が抑制されるという、よくある病気です。

 生理不順のほかには目立った症状がないまま進行していることも多いです。妊活をはじめてもなかなか妊娠できず、不妊の相談をしてはじめて病気が発覚する人もいます。そこから治療スタートとなると、赤ちゃんを授かるまでに時間がかかることもあります。

 普通でない生理の影には、病気が隠れていることがあります。そんな事態を防ぐためにも、生理不順に気づいた段階で「個性」だとは思わずに、病院で相談するようにしてください。「医者が教える女体大全」には、気を付けるべき症状などについて書いておりますので、参照してください。