米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は今週予定されている待望の講演で、なかなか到達できない2%のインフレ目標達成へ向けた新たな枠組みを示す見通しだ。パウエル氏は講演後も気を抜けない。他にも任務が増えているためだ。完全雇用と低インフレだけではもはや十分ではない。FRBは近年、金融危機の防止、貿易赤字の縮小、気候変動対策などを求められ、ここに来て人種間の経済格差是正も要求されている。ミッション・クリープ(際限のない任務)は真のリスクをもたらす。FRBは政策手段が十分備わっていない目標を達成するよう求められているうえ、そうした手段はしばしば矛盾をはらむ。黒人男性ジョージ・フロイドさんが今年、警察の拘束下で殺害された事件を受け、人種間の経済格差を巡る徹底的な調査が始まった。民主党の大統領候補であるジョー・バイデン前副大統領は先月、連邦準備法(FRA)の修正を呼び掛け、「雇用、賃金、富における人種間の根強い格差に積極的に照準を定める」よう要請した。議会民主党はその後、FRBに「雇用、賃金、富、手頃な信用アクセスに関する人種格差」の排除をFRBの責務とする法案を発表した。共和党が上院を支配する間は成立しないであろうが、民主党が11月に上下両院とホワイトハウスを奪還すればそれも変わる可能性がある。