日本が条約上の義務として米軍基地を置いているのは、集団的自衛権を行使して米国を守る義務を負うことが、憲法上も事実上もできないと解釈してきたからだ。

 だが、自衛隊がそれなりの防衛力を持つようになり、一方で中国の膨張や北朝鮮の脅威など、安全保障環境も変わってきた。いつまでも非対称な同盟関係でいいとは思えない。

 自衛隊は、憲法9条の規定のもとで、「自衛のための必要最低限の実力」であれば「戦力」ではない、「戦力」ではないから「陸海空軍」ではない、と解釈してきたが、実態との乖離は進む一方だ。海外はおろか、日本国民にとってすらわかりにくい解釈を続ければ、自衛隊に対する支持も安全保障政策への理解も進まない。

 国全体が安全保障問題について思考を停止してしまっているかのような状況は、変えなければいけないと思っている。

米中新冷戦の状況で
米国だけに肩入れは危ない

――米中新冷戦と言われる国際政治環境の変化のもとでの新しい安全保障戦略では、何が重要だと考えますか。

 明確な情勢認識を持たないとアウトプットも時代に合わないものになる。

 中国の海洋進出や香港への強硬措置を見ると、中国の国家戦略が変わってきているように感じる。

 一国二制度が風前の灯であることは香港に対する扱いで明確になったが、台湾に対しても今後、中国は強硬措置を取る懸念があり、領土的野心をより鮮明にし始めたと考えるべきだろう。

 もう一つの変化として、中国のGDPに占める輸出の割合はピーク時の36%からいまは17%にまで落ちている。対外的な野心を顕在化させ、米中貿易戦争が続く一方で、経済的には内需中心の成長戦略に切り替えつつある。中国の狙いや思惑をしっかり分析する必要がある。

 共産党政権は、党の軍隊である人民解放軍と、徹底した情報統制、そして経済成長により国民を豊かにすることで体制を維持してきた。軍事力を強化しても経済的な発展がなければ共産党政権はもたない。その意味では、経済的に相互依存関係にある日本にもそれなりの影響力はある。

 一方、米国は、自らの地位を脅かしかねない国家のGDPが、米国のGDPの6割を超えることを許容しないと言われている。トランプ政権では「自国第一」が行き過ぎている。その意味では米中対立の根は深い。

 だが、欧州でもアジアでも、米国と中国が角を突き合わせる状況の中で、一方的にどちらかの肩を持つようなリスクの高い外交戦略を採る国は少ない。日本も、安全保障上はアメリカと足並みをそろえる一方で、中国との経済的な関係を可能な限り安定させるような方策を考えないといけない。

 どちらかに、一方的に肩入れするのは避けるべきだ。