サラリーマンでありながら海外の映画祭でグランプリを受賞した長久允氏。その思考法と脚本術を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』が発売となりました。佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさんも大絶賛の同書から、抜粋・再構成して特別公開します。

脚本の教室Photo: Adobe Stock

「良くない感情」が役立つ瞬間

 SNSで何かを投稿しようとしたときに、書いた文章を自分で推敲することがあるのではないでしょうか。

 これを言ったら不謹慎で炎上してしまうかもしれないな、とか、これは余計な心配をされすぎちゃうかもしれないな、とか。

 そうやってカットされる「良くない感情」ですが、それが活きる場面があります。

 それは、「自分だけの表現をしたい」と思ったとき。

 私で言うと、脚本です。実は、書こうとして「何も浮かばない!」となったとき、裏技として、この「良くない感情」が使えるのです。

簡単に書けないからこそ価値がある

 書けない強い感情は、単に文字にするだけだとやはり誤解が発生します。誰かを傷つける鋭利さがありすぎる。

 それに、SNSは他者とのコミュニケーションをとる場ですから、不適切であると考えます。

 ただし、「自分だけの表現」の場ならば、それは可能です。映画はコミュニケーションの場ではないし、より複合的な情緒要素を含んだ状態で完成されるので、いい意味で鋭利さは失われます。

 つまり、SNSに書けない感情は金脈。そう思うのです。

 金脈というのは強い言葉すぎるかもしれないけれど。

「思ってしまった」のは事実だから

 そしてここからが大事なことなのですが、もしあなたがSNSに書けないことを「思った」とします。

 それが不謹慎で、誰かに言いづらい気持ちだったとしても、「思った」という事実は確かなことだと思うのです。

 だから裏技として、これらの「良くない」とされる気持ちを題材に物語を描いてみるのはどうでしょうか。

 なぜなら、それほど強い気持ちであれば、その表現は必ず他の誰かの心も動かすものになっているはずだからです。

 もちろんそのときは慎重に。それを見た誰かを加害していないかは検証が必要です。