安倍首相が辞任表明
日本経済へのインパクトは?
8月28日、安倍晋三首相が記者会見において、辞任を表明した。
会見前に辞任の意向に関する話が表に出始め、NHKが速報を打った。間を置かずに2回にわたって病院を訪問し、時間を空けて本人が会見に臨んだという流れを考えれば、関係者の間で辞任の方向性は薄々わかっていたとも考えられる。
健康不安説がある中で、緊急性がなければ立て続けに大学病院へ通院はしないだろうし、健康不安を払拭するなら、通院から日にちを空けての会見ではなく、すぐに否定した方がいいはずだ。
そうしたことからも辞任は不可避と見られたが、それ以上に会見前からぽろぽろと情報が漏れてくるあたり、政権が末期状態にあったことを示している。つまり、政権の強さは指導者の能力だけでなく、その周辺、あるいは国民の主観的な判断によって決まるということであり、この「主観」が本稿のポイントでもある。
何よりも心配なのは安倍首相の健康であり、1日も早い平癒を祈りたいが、この時期の首相辞任は日本経済にとっても非常に大きなインパクトがある。それは誰より首相自身が理解しているはずだから、それほど病状が深刻だということであろう。
少し話はそれるが、記者会見の中で「2度目の任期中の辞任、政権投げ出しという批判があるのでは」という趣旨の質問が記者から出たが、病気であることを責めるのは少し違うのではないか。健康でもそうでなくても、性別、信条などのさまざまな違いがあっても、それを理由に排除されないことが、ダイバーシティが実現された社会である。
難病を患いながらも8年弱の長期にわたり政権運営をしてきた安倍首相の姿は、「たとえ根治が難しい病気があっても首相にだってなれる」という人々の希望にも繋がっていたのではないか。病気で退陣することは残念ではあるが、病気であることの責任を問うのは筋が違う。病状とリスクを勘案して自ら職を辞したことは、英断であったかもしれない。