投資家は新型コロナウイルス流行からの回復動向を見極めようとしているが、そこには金融危機後と同じような死角が潜んでいる。インフレがどう作用するのか、分かっていないのだ。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)による甚大な打撃にもかかわらず、S&P500種指数は今月に入り過去最高値を更新。さらに、市場のインフレ期待は11年ぶり低水準をつけてからわずか数カ月で、2月の水準に回復した。だがその裏で、新型コロナが消費者物価にどう影響するかを投資家は判断できずにいる。需要が弱まる中でデフレを恐れる向きがある一方、その反対に備える動きもある。すなわち、米議会の大胆な財政支援と連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融刺激策が――他の主要国政府や中銀の措置も相まって――1970年代に広がったインフレと失業の危険な組み合わせを再発させるリスクから、身を守ろうとする動きだ。FRBはインフレ抑制のための先制的な利上げを行わないことを決定し、新たな戦略の一環として27日に承認したが、これは後者の懸念を高める。