――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
***
安倍晋三氏が日本の首相に就任した2012年、同氏が将来、グローバリゼーションの擁護者になるとは思われていなかったはずだ。安倍氏は誇り高き国家主義者で、日本の愛国心を呼び覚まし、日本の軍事的制約を緩め、過去の侵略行為への注目を抑えることに腐心した。自由市場の信奉者でもなく、米国と太平洋地域10カ国の野心的な貿易協定である環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を交渉した前任者を批判していた。
だが、安倍氏は先週の辞任発表までに、日本が世界に大きく開かれた国となる立役者となった。中国と米国によって世界の貿易システムが弱体化する中、安倍氏は世界貿易の最も有力な擁護者の1人となり、TPPを結実させたのみならず、他にも複数の貿易協定を結んだ。他国が外国人労働者に対し新たな垣根を立てるのをよそに、安倍氏は垣根を低くした。