安倍晋三氏中国と米国によって世界の貿易システムが弱体化する中、安倍氏は世界貿易の最も有力な擁護者の1人となった Photo:Ko Sasaki for The Wall Street Journal

――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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 安倍晋三氏が日本の首相に就任した2012年、同氏が将来、グローバリゼーションの擁護者になるとは思われていなかったはずだ。安倍氏は誇り高き国家主義者で、日本の愛国心を呼び覚まし、日本の軍事的制約を緩め、過去の侵略行為への注目を抑えることに腐心した。自由市場の信奉者でもなく、米国と太平洋地域10カ国の野心的な貿易協定である環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を交渉した前任者を批判していた。

 だが、安倍氏は先週の辞任発表までに、日本が世界に大きく開かれた国となる立役者となった。中国と米国によって世界の貿易システムが弱体化する中、安倍氏は世界貿易の最も有力な擁護者の1人となり、TPPを結実させたのみならず、他にも複数の貿易協定を結んだ。他国が外国人労働者に対し新たな垣根を立てるのをよそに、安倍氏は垣根を低くした。