「あの西和彦が、ついに反省した!?」と話題の一冊、『反省記』(ダイヤモンド社)が出版された。マイクロソフト副社長として、ビル・ゲイツとともに「帝国」の礎を築き、創業したアスキーを史上最年少で上場。しかし、マイクロソフトからも、アスキーからも追い出され、全てを失った……。IT黎明期に劇的な成功と挫折を経験した「伝説の起業家」が、その裏側を明かしつつ、「何がアカンかったのか」を真剣に書き綴った。ビル・ゲイツとの大喧嘩、アスキー共同創業者の離反、役員からの造反など、数多くの挫折を経験してきた半生を、なぜ、いま反省しようと思ったのか……。西氏はこう記した。

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過去の人生に“if”はない

「ハンセイキを書いていただけませんか?」

 長年にわたって信頼している経済雑誌の編集長が連れて来た書籍編集者が、僕に企画書を差し出しながら、そう言った。普通、「ハンセイキ」と聞けば、「半生記」と思うだろう。僕も60歳を過ぎたから、「たしかに、そんな依頼をされるような年齢になったな」と合点した。

 ところが、企画書を見たら、書籍のタイトルが「反省記」と、やたらと大きなフォントで印字されている。

 しかも、「マイクロソフト副社長として『帝国』の礎を築き、創業したアスキーを史上最年少で上場。だけど、マイクロソフトからも、アスキーからも追い出され、全てを失った……」と書いてある。本を書いて、反省しろというわけだ。ひどいよね。編集者も自覚があるのか、申し訳なさそうな顔をしている。

 だけど、こうも思った。

 そろそろ自分の過去を反省して、それを公にしてもよい時期なのかもしれない……。

 僕は、早稲田大学在学中で、21歳だった1977年に、郡司明郎さん、塚本慶一郎さんとともに『月刊アスキー』を創刊してから、ずっと振り返ることよりも前に進むことばかり考えてきた。

 過去の人生に“if”はないのだから、振り返ってもしょうがないとも思っていたが、実際には、センチメンタルになりたくなかったからなのかもしれない。よい思い出ばかりではなく、地獄のようなつらい思い出も山ほどあるから、そうした過去と直面するのを避けたかったのだ。