個人のパソコン作業を徹底的に効率化する。その一点にこだわることで話題沸騰中の『脱マウス最速仕事術』。しかし「ショートカットキーを覚えたい」と思っても、覚えられずに挫折した経験を持つ人も多いと思います。今回は『脱マウス最速仕事術』の著者・森新さんに「なぜ、ショートカットキーがマスターできないのか」「どうしたらマスターできるのか」を聞いてみました。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

“Ctrl”や“Shift”ってそういう意味だったのか!<br />話題の「ショートカットキー記憶術」が抜群に役に立つ理由


――この本では「脱マウス」「マウスの依存度を下げる」という話をしていますが、「なかなかショートカットキーが身につかない」という人も多いと思います。私自身もその一人なんですが、そもそもなぜ「ショートカットキー」は覚えられないのでしょうか?

 一言で言えば「覚えよう」としているからだと思います。ショートカットキーが覚えられない、マスターできない理由として、一番よく聞くのが「『Ctrl』『Alt』『Shift』がごちゃごちゃになって、わからなくなる」という意見です。それってもっともな話で、ひたすらショートカットキーを暗記しようとしたら、そりゃあ「Ctrl」なのか「Shift」なのか「Alt」なのか、どの組み合わせなのか混乱して、間違ったキーを押してしまうのも当然です。

 間違うだけならいいんですが、意図しない操作をして画面が変わってしまって、今度は元に戻せなくなる…。そんな体験をしている人は多いと思います。その結果「こんな面倒なことになるなら、ショートカットキーなんて使わずにマウスで作業をした方がマシ!」ということになってしまうんです。その気持ちはとても理解できます。

“Ctrl”や“Shift”ってそういう意味だったのか!<br />話題の「ショートカットキー記憶術」が抜群に役に立つ理由森新(もり・あらた)
ショートカット・Outlook研究家
1988年高知県生まれ。北海道大学工学部を卒業後、サントリーフーズ株式会社に入社。サントリーグループ内にて、営業や管理系部門を経て現在新規事業に携わる。自らの働き方改革に取り組むなかで、PCスキル獲得による業務生産性の大幅向上の余地を発見。ライフワークとして研究を重ね、独自にノウハウを蓄積。研究したノウハウをスキルシェアサイト「ストアカ」を通じて発信したところ、個人だけでなく法人からも講演オファーを受ける大人気講師に。最高ランクとなるプラチナバッジを獲得。本書の内容のベースとなるショートカットキーのセミナーの満足度は、97%と極めて高い評価を受けている。また、メディアからの注目度も高く、FNN系列「Live News α」や日本テレビ系列「マツコ会議」に出演するなど、数々のメディアに取り上げられている。著書に、『アウトルック最速仕事術』、『脱マウス最速仕事術』(ダイヤモンド社)がある。

――本当によくある話だと思います。

 でも、これは出発点に問題があって、そもそも「マル暗記しよう」という発想自体に無理があるんです。それこそ予備知識がまったくない状態で英熟語を覚えるようなもので「on」とか「in」の意味をまるで知らずに、ただ「come in」なのか「come on」なのかをマル暗記しようとしたら、覚えられないのは当然ですよね。だからこそ、最初にやるべきは「ひたすらマル暗記」ではなく、キーボードがどういうしくみになっていて、「Ctrl」や「Shift」にはどういう意味や機能があるのかを知ることなんです。

――それは目からウロコのアプローチですね。キーボードのしくみを理解するとは、具体的にどういうことですか?

 わかりやすい例を一つ上げてみましょう。パソコンの超初心者は「=」の記号がなかなか出せないんです。キーボードの右上の方に「ほ」のキーがあって、そこに「=」も印字されているので、本来このキーを押せば「=」は出るはずなんです。ところが、ローマ字入力の場合「=」が出ずに「ー」が出てしまいます。

“Ctrl”や“Shift”ってそういう意味だったのか!<br />話題の「ショートカットキー記憶術」が抜群に役に立つ理由

 じつは、この瞬間に何を学ぶかがめちゃくちゃ重要なのですが、パソコン教室含め、ほとんどの人がすぐに「『Shift』と一緒に『ー』のキーを押してください。それで『=』が出せますよ」と正解だけを教えてしまうんです。あまりに自然なやりとりなので、違和感を覚えないかもしれませんが、これこそ「マル暗記のやり方」です。

――たしかに「Shift」+「ー」という組み合わせをそのまま覚えろと言われているのと同じですね。

 それをやっている限り、ひたすら暗記しなければいけないので、すぐに挫折してしまうんです。でも、キーボードに「=」と印字がされているんですから、本来は覚える必要なんてなくてないんです。そのキーを押せば、絶対出るはずなんです。

 そこで重要なのが、「Shift」とはどんなキーなのかです。じつは、「Shift」は「上にある文字や記号を表示させる」という機能を持ったキーなんです。だから「Shift」には『上向きの矢印』が書いてあることが多いじゃないですか。それさえ知っておけば「=」も「%」も「&」も難なく打てます。超初心者でも迷う必要はありません。

 パソコン教室で最初に教えるべきは、そういったキーボードの基本構造であり、キーの意味なんです。意味もなくひたすら操作を覚えるのではなく、「Shift」「Ctrl」「Alt」「Windows」などのキーの意味を理解すれば、ショートカットキーはそんなに難しいことでありません。なかには多少複雑な構造になっているものもありますけど、とりあえず「Shift」「Ctrl」「Alt」「Windows」などの基本構造を理解しておけば、圧倒的にキーボードは使いやすく、作業は効率的になります。これは、声を大にして訴えたいところですね。

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