キーボードは「早く打てない」ように設計されたものだった!

 余談ながら、そもそもキーボードはタイプライターから進化したもので、その歴史にも諸説あるんですが、タイプライターの配列は「早く打てないように作られた」という話があるんです。タイプライターは、キーとアームが繋がっていて、その先にスタンプが付いているので、キーを打つとアームが動き、スタンプを「ガチャン」と紙に印字する。そんなカラクリになっています。この場合、あんまり早くキーを叩きすぎると、正しくスタンプが押せないので、ゆっくり確実にキー押す必要があります。そのため、あえて「早く打てないキー配列」にしたというエピソードがあるんです。

 また、タイプライターが進化していく過程で「もっといろんな文字や記号を印字できるようにしよう」と段々なっていくわけですが、キーの数には限界があり、無限に増やすわけにもいきません。そこで登場したのが「Shiftキー」です。

 同じキーを打った場合でも、「Shiftキー」を一緒に押すと、アームが少しだけ前に動いて違うスタンプを印字できるようにする。これが起源です。その構造が今でもキーボードに残っていて、「Shift」とは「上に印字してある文字や記号」を打つためのキーとなっているんです。それを理解しているだけでも、キーボードの使い勝手は確実によくなります。

“Ctrl”や“Shift”ってそういう意味だったのか!<br />話題の「ショートカットキー記憶術」が抜群に役に立つ理由

――ずいぶん長い間パソコンを使ってきましたが「Shiftキー」にそんな意味があったなんて、知りませんでした。

 そういう人が本当に多いんですよ。パソコンを覚えるとき、最初に理解しておけば、その後の苦労は全然違ってくるんですけどね。ちなみに、「Ctrl」は『奥に隠れた機能』を引き出すキー」です。

――「奥に隠れた機能」ってなんですか?

 じつはこれも基本構造なんですが、キーボードというのは、限られた数のキーをフル活用するために、「表層的な機能」と「奥に隠れた機能」の二重構造になっているんです。さきほどの「Shift」や「Fn」(ファンクションキー)は、原則として「表層的な機能」を引き出すためのキー。これらのキーを使うことで、原則としてキーボードに印字されている文字や記号を打つことができます。まさに「表面に出ている機能」です。

 一方、「Ctrl」は「隠れた機能」を引き出すためのキーです。よく使う「コピー&ペースト」も「C」や「V」を押しますが、それが「コピー」だとか「ペースト」だなんて、どこにも書いてないですよね。つまり、奥に隠れた機能として「コピー」や「ペースト」が存在しています。この隠れた機能を引き出すために「Ctrlキー」を使うのです。同じように「Fn」「Alt」「Windows」などにも、それぞれそのキーが持っている意味があるわけです。

――そうやって「Shift」や「Ctrl」「Fn」などのキーの意味を解説してもらうと、なんとなく「ショートカットキー」をマスターできそうな気になってきますね。

 この本で私が一番訴えたいのは、まさにそこです。マウスの依存度が少しずつ減ってくると、効率は確実によくなりますから、ぜひ、みなさんにも「脱マウス」を目指して欲しいのですが、「ショートカットキーを覚える」と聞いただけで、拒否反応というか「なかなか覚えられない」と言い出す人がいるんです。でも、断言しますが、決してそんなことはありません。

 ショートカットキーをマスターする方法を知って、ステップを踏んでいけば、誰だって、キーボードで作業がどんどん完結していく快感を味わえます。ぜひ、その快感を味わうための一歩を踏み出して欲しいと願っています。

【大好評連載】
第1回オフィスワーカー全員が「脱マウス」すれば、日本の生産性は急上昇する 
第2回なぜ、よく使うショートカットキーは”キーボードの左側”に集約されているのか?
第3回エクセルで発覚! 仕事が「できる人」と「できない人」を隔てる決定的な差とは?
第4回“Ctrl”や“Shift”ってそういう意味だったのか! 話題の「ショートカットキー記憶術」が抜群に役に立つ理由

“Ctrl”や“Shift”ってそういう意味だったのか!<br />話題の「ショートカットキー記憶術」が抜群に役に立つ理由