ESG(環境・社会・ガバナンス)を巡るリスクを計ることはできるのだろうか。二酸化炭素(CO2)排出量という大きな例外を除けば、答えは恐らくノーだ。だからといって、リスク定量化の試みが投資家の役に立たないわけではない。いわゆるサステナブル投資への関心は急拡大している。証拠の1つは投資信託に流れるマネーだ。モーニングスターの集計によると、サステナブル投資に特化した米ミューチュアルファンドへの純流入額は今年1-6月期に209億ドル(約2兆2200億円)に達し、通年として過去最高だった2019年の214億ドルに迫っている。ESG戦略を専門としていないファンドマネジャーは、ESGを投資の枠組みに組み込もうと躍起になっている。ESG格付けはすでに確立されているものの、よく知られた問題がある。各社がそれぞれ異なる方法で対象企業のパフォーマンスを評価しているため、同じ企業に対する格付けの相関性が低いのだ。例として有名なのは米電気自動車(EV)メーカーのテスラだ。MSCIはテスラ車が環境にやさしい商品であるとし、同社に高い格付けを付与している。一方、FTSEラッセルによるテスラのESG格付けは、別の理由で中程度となっている。こうした混乱により、ESG格付けは不明瞭だという評判を付されてしまう。