AIエージェントに何を任せる?人間との「分業設計」でなくてはならない“2種類の人材”とは企業において、AIエージェントと人間との分業設計に欠かせない人材とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生成AIの普及に続き、2026年に期待されるAIエージェント。だが、マイクロソフトやグーグルでエンジニアとして活躍し、複数の企業で技術顧問を務める及川卓也氏は、エージェントが本当に機能するには、日本企業特有の構造を見直す必要があると説く。エージェントを使いこなし、競争力を獲得する企業になるために必要なこととは。

AIの自律化が迫る「分業設計」という
新しい経営課題

 以前の記事で、カーネギーメロン大学(CMU)のフェイクカンパニー実験を例に、AIエージェントには現実的な限界があることを指摘しました。AIは「文脈の共有」「暗黙知の理解」「目的の維持」といった、人間であればごく自然にこなせるタスクを苦手としています。AIエージェントは、属人的な要素や曖昧さに依存した環境では容易に機能不全に陥ります。

 AIエージェントが自律的に動く時代、人間は何をすべきなのでしょうか。

 私たちは既に、業務手順を記憶させて自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)という手段を持っています。しかしAIエージェントの出現は、RPAが実現した「自動化」から、さらに先にある「自律化」へのパラダイムシフトをもたらしています。

 RPAの時代、人間は「どう動くか」を細かく指示する必要がありました。これは手間でしたが、裏を返せば人間が完全にコントロールできる範囲にありました。ところがAIエージェントは、目標だけを与えれば手段を自ら選択します。この自律性こそがAIエージェントの価値ですが、同時にそれは人間がコントロールできない領域を生むことを意味します。

 CMUの実験は、この構造による課題を露呈させました。AIが自律的に動くほど、人間は「何をAIに任せ、何を人間が判断するか」という分業を設計しなければなりません。

 では、人間が担うべき領域とは何でしょうか。それは何が課題かを見極める「ディスカバリー(課題探索)」、どちらを優先すべきか判断する「意思決定」、AIの行動がもたらした結果に最終的に責任を負う「アカウンタビリティ」、そして何をAIに任せ、何を人間が行うか設計する「分業設計そのもの」です。

 この構造を理解せずにAIを導入すれば、企業は「AI化はしたが、何も変わらない」、あるいは「AIが暴走して混乱した」という両極端な結果に陥ります。