写真はイメージです Photo:PIXTA

悪しき伝統を守るための有識者会議ならば不要

 大相撲秋場所が13日に初日を迎える。先場所では、復活優勝を遂げた照ノ富士、優勝こそ逃したが新大関で12勝を挙げた朝乃山、突然の婚約発表で世間を驚かせた大関・貴景勝らの活躍に期待がかかっている。

 期待の裏で、この夏、角界ではさまざまなスキャンダルがあった。7月場所の前には中川親方のパワハラが告発され、場所中には幕内の人気力士・阿炎が接待を伴う夜の店に複数回行ったとして休場に追い込まれた(阿炎は場所後、自ら引退届を出すが協会に受理されず、処罰の上で引退を免れた)。式秀部屋の力士たちが集団で部屋を逃げ出し、おかみさんのパワハラを告発する事件も起こった。横綱・日馬富士の暴行事件に端を発し、転じて貴乃花親方の廃業に発展した騒動からまだ2年半。土俵上の熱戦がファンの心をつないではいるが、相撲界への不信は払拭されていない。

 そんな中、日本相撲協会内に昨年から設置されている「大相撲の継承発展を考える有識者会議」の第6回会合が8月20日に都内で開かれた。デイリースポーツによると、会議後に会見した八角理事長は、「守るべきは守るという思いで臨んでほしい、と。そういうのが印象に残っています。300年以上続いてきたのは守るところを守ってきたから。そういうのに感銘を受けた」と語っている。これを目にして私は言葉を失った。これだけの不祥事が頻発しているのにまだ「守るべきは守る」が真っ先に来るのか?「守るべきを守るため」に、「変えるべきを変える覚悟」が伝わってこないと感じたのだ。

原点に「師弟関係の崩壊」がある。その理由は?

 中川親方の問題も式秀部屋の脱走事件も、師弟関係の崩壊が前提にある。親方は(式秀部屋の場合おかみさんは)自身の立場を相撲協会の構造的な体制に守られて、力士たちをまるで使用人のように支配していると言っても過言ではない。

 かつての師弟関係には、構造的支配以前に信頼と尊敬があり、相撲道をきわめようと精進する力士とそれを指南する親方の「技を伝授する師弟関係」があった。ところが、昨今の親方衆と力士の関係は大きく変容して見える。