暴力の温床『付き人制度』はそのまま、
幕下以下には“給料”がない現状
貴乃花親方が角界を去り、貴ノ岩も暴力事件によって引退した。面倒くさい存在だった2人が去り、日本相撲協会の八角理事長以下関係者たちはずいぶん安堵しているのかもしれない。だが、本当の問題や危機は解消したのか? これで相撲界は一枚岩で再び繁栄の道を歩み出すだろうか?
協会内の暴力の実態を調査した第三者機関「暴力問題再発防止検討委員会」の報告を受けて、日本相撲協会は10月25日に7項目から成る『暴力決別宣言』を出した。
一、大相撲においては、指導名目その他、いかなる目的の、いかなる暴力も許さない。
この文に始まる7項目は、すべて決意表明、厳しい姿勢と指導を宣言するだけで、暴力を根絶するため協会の体質や仕組みにメスを入れる具体的な事例は一切提示されていない。
例えば、暴力的な支配者意識をあおり、悪しき上下関係さらには暴力の温床になっている「付け人制度」を廃止するなどの動きはない。幕下以下の力士が関取に“たかる”しかない現在の給与体系を見直すなどの「痛みを伴う」改革など一切考えていない様子がうかがえる。
11月29日の理事会で、力士給与の改定(昇給)が決まった。月給は十両110万円、幕内140万円、横綱は300万円。一方、幕下以下は「力士養成員」と呼ばれ、給料はない。場所ごとに「力士補助金」はあるが、幕下で年99万円。序の口は年46万2000円だ。いまどき、どんな職人の見習いでも最低賃金が保障される。
相撲界のブラックぶりがなぜ放置されるのか? 「だからこそ一生懸命練習して、早く出世しようと頑張るのだ」という論理をいまだに押し通している。ここに象徴される時代錯誤こそ、日本の若者が角界を目指さない大きな要因だと、日本相撲協会の八角理事長をはじめ理事たちは気づかないようだ。
若者たちが見向きもしない業界の未来は、おおかた想像がつく。それでも相撲界の当事者たちは権益にしがみつき、伝統ある相撲人気はこれからも続くと高をくくっている。