極右や人種差別主義者も利用
さらなる奇策で混乱の可能性も

 それだけではない。民主党政権では「法と秩序」が守れないという印象をつくり出すため、過激な右翼や人種差別主義者をSNSで巧みに扇動して反トランプデモ参加者と衝突させている。

 そしてトランプ自身は、エバース州知事(民主党)の強い反対を押し切って、黒人男性銃撃の現場で抗議デモが続いたウィスコンシン州ケノーシャを英雄気取りで訪れ、被害者家族には会わずに地元の経営者の集まりで「破壊行為は国内テロだ」と息巻いた。

 国民感情を逆なでする行為だと日本では受け取られているが、実際には逆だ。アメリカでは過激なデモの取り締まりに軍隊の動員も辞さないというトランプの強硬姿勢を国民の半数以上が支持している(米調査会社モーニングコンサルト調べ)。

 それはそうだろう。朝から晩までテレビニュースで激しい衝突や破壊シーンを目にしていれば多くの国民が身の危険を感じる。トランプ陣営の“Blue Lives Matter(警官の命も大切だ)”(警官の制服が紺色だから)というスローガンもそれなりに支持されているのである。

 さらに、トランプはソーシャルメディアで存在感を急速に増している極右系陰謀論「Qアノン」の信奉者の支持を受け入れる姿勢まで示している。

 Qアノン(匿名人物Q)はもともと2017年に「Qクリアランス(政府最高機密アクセス権)保持の愛国者」と名乗る人物がネット上の匿名掲示板に投稿したことが始まりで、そのフォロワーたちはトランプを世界の権力構造を支配する陰謀を阻止するための救世主として崇拝している。

 オバマ前大統領や財界人は小児売買に加担していてクーデターも計画しているというような荒唐無稽な陰謀論満載で極めて危なっかしい。連邦捜査局(FBI)はQアノンを国内テロの脅威としているくらいだ。

 だが、トランプはそんなことはお構いなし。「(Qアノンについては)よく知らないが、彼らは私のことが大好きなようだ。ありがたいことだ」とツイートしている。とにかく自分に味方さえしてくれれば誰でもいいのだ。

ドナルド・トランプ 世界最強のダークサイドスキル
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 今回の大統領選ではコロナ感染拡大防止のため、ほとんどの州(45州)で郵便投票が実施される。敗北した場合にはトランプは、郵便投票で不正行為があったと騒ぎ立てて法廷闘争に持ち込む構えだ。そうなれば再集計作業と裁判に膨大な時間がかかり、2000年のジョージ・W・ブッシュ対アル・ゴア逆転劇以上の大混乱に陥るだろう。

 奇策としては、コロナを理由に選挙戦終盤に民主党優位の都市に対してトランプが突如外出禁止令を発令するかもしれない。あるいは安全性が確認される前にワクチンを早期承認して形勢逆転を狙うサプライズ作戦もある。大型の追加財政支援を華々しく発表して株価をつり上げる手もある。とにかくトランプは悪知恵だけは働くのだ。

 トランプが毎日のようにチェックしているラスムッセン調査で彼の支持率は依然40%台を保っている。現時点でトランプ再選の可能性は、まだ4割程度あるとみておいた方がいい。

(ジャーナリスト・キャスター 蟹瀬誠一)