ソニーの「テレビ事業分離」に見える極めて合理的な思惑、日の丸家電は“生き残り策”のお手本にせよテレビ事業では「持たざる強み」を有してきたソニ―。中国企業と合弁会社を設立する思惑とは Photo:JIJI

ソニーがテレビ事業を分離
TCLと合弁会社設立の成算とは

 1月20日ソニーグループのエンタテインメント・テクノロジー&サービスを担うソニーは、中国テレビ大手のTCLと合弁会社を設立し、ソニーのテレビやホームオーディオの事業を新会社に移行することを発表した。

 TCLは1981年に設立され、2000年代にフランスの家電メーカーであるトムソンと合弁企業を設立した。トムソンはアメリカの伝統的家電ブランドRCAを有していたが、TCLとの合弁によって、RCAの商標はTCLが取得した。RCAブランドのテレビ生産を機に大手テレビメーカーに成長し、現在では、欧米諸国にTCLブランドで大型テレビを販売、日本にも進出しているので名前を聞いたことがある方も多いのではないだろうか。

 TCLは、セットメーカーとして完成品のテレビを作る事業を行う一方で、 CSOT(華星光電)という液晶パネル、有機ELパネルを生産するパネルメーカーを傘下に置く、韓国サムスン同様の垂直統合型のテレビメーカーである。大型パネルを自社で生産し、自社ブランドのテレビとして販売できることが強みでもある。2021年にはパナソニックが低価格帯のテレビの生産をTCLに委託している。TCL自体も大手メーカーであるが、他社ブランドの製品も生産することで、パネル、セットともに規模の経済を追求している。

 先にTCLはパネルとセットを両方持っていることを強みと書いたが、同時に、パネルを持っていることはTCLにとって悩みの種にもなっている。

 これはサムスンやLGなども同じ状況であるが、液晶パネルは大規模な設備投資を伴い,規模の経済性が働くので、どうしてもパネルを大量に生産する方向に働く。そうすると、市場でパネルが余ったときに、セット事業にしわ寄せが行き、テレビセットの価格を引き下げてでも大量にパネルをはけさせようとしてしまう。

 液晶パネルは巨大なマザーガラスからサイズごとのパネルを切り出して作るので、数を売ろうと思えば、できるだけ大型パネルを搭載したテレビを売りたいと思うようになる。その結果、大型テレビの価格を引き下げる圧力が働き、特に大型テレビの市場の大きい北米を中心に、TCLやサムスンといったパネルとテレビセットを垂直統合的に生産するテレビメーカーがプライスリーダーになって、テレビの価格を引き下げるといった現象が過去十数年続いてきた。