もともと社員は350人ほどしかいません。拠点は東京の本社しかないので、社員は誰もが家族のように親しく打ち解けています。社員持ち株制度なので、オーナーはいません。社員の互選によって社長は決まります。無借金経営なので、記事に対する圧力がかかる可能性も極めて少ない会社です。

 それ以上に誇るべきは、民主主義でしょう。社内の誰も、社長や局長などと呼びません。職名ではなく名前を呼びます。平社員が社長に話しかけるときも「○○さん」。逆に社長が平社員に呼びかけるときも「○○くん」。

 特派記者(いわゆる契約のフリー記者)に対しても、同じです。編集長と呼ばずに○○さんだし、編集長も契約記者に対しては○○さん。フリーの記者とは、言わばノンフィクション作家の卵。当然呼び捨てにする関係ではなく、編集者と作家の関係なのです。

 最近、「社長」などと肩書で呼ぶ社員が増えた、という愚痴を社内から聞きましたが、この美風は壊さないでほしいものです。

阿川弘之が示した
文春社員の「6カ条」

『月刊文芸春秋』90周年には、阿川弘之先生に原稿を書いていただきました。「伝統の社風」と題された文章は、一度は文春に入社を志した作家にしか書けない、愛情にあふれたものでした。

 阿川さんは文春社員に必要なことを6カ条、示してくださいました。 

一、どんな上役に対しても自由にものが言えて、自己の主張を容易には曲げないこと
二、ユーモアが通じること
三、字句難解で、観念論風な文章は好まれざること
四、偏向した論議も、右寄り左寄りを問わず遠ざけること

(以下略)

「みなさん、どうか、伝統を大切に取り扱ってください」というのが阿川先生の言葉ですが、OBの私も同じ気持ちです。