(1)実際には地域によって運用が異なっていること

 現時点で、社会保険を強制的に徴収されていない地域では、追徴のリスクがある。それを軽減するために、会社は当局への確認記録を残しておくなどの対策が必要であろう。

(2)日中二国間の社会保障協定が締結されていないこと

 社会保障協定においては、現在、日中の二国間で社会保障協定が締結されていないため、ルールがない状態だ。養老年金保険や失業保険など、一定の受給条件があって外国人が利益を受けられる可能性が低い社会保険について適用を除外、保険期間の通算(なお、年金を受給するために最低必要とされる期間は、日本は25年間、中国は15年間)などについて、決まりはない。

 今のままでは、日本企業は、日本と中国で事実上、二重払いになってしまう。ルール作りが進まなければ、会社は二重払いを解消するため、日本における各種社会保険について見直しを考えるだろう。

 また、中国においては、一般的に民間の海外旅行保険に基づく医療サービスの方が、医療保険に基づく医療サービスよりも条件がよいとされている。そのため、医療保険への加入によって、海外旅行保険への加入が打ち切られれば、受けられる医療サービスの質が低下するのではないかとの不安も広がっている。

 慣れない環境で仕事と生活をしなければならなくなれば、病気になる可能性も上がるかもしれない。万が一のときに、現地での医療保険がどうなっているかは、非常に大切なことだ。自分の身を守るために、会社側にこの点はぜひ確認した方が良い。


<弁護士ドットコムとは>

 「弁護士ドットコム」は“インターネットで法律をもっと身近に、もっと便利に。”を理念に、現在4000名を超える弁護士が登録する日本最大級の法律相談ポータルサイトです。弁護士費用の見積比較の他、インターネットによる法律相談や、弁護士回答率100.0%(※)の法律特化型Q&A「みんなの法律相談」を運営。累計法律相談件数は 20万件を突破しています。2012年4月12日より、独自の法的ナレッジを活かしたニュースコンテンツ「弁護士ドットコムトピックス」を提供開始。話題の出来事を法的観点から解説した記事が大手ニュースメディアのトップページに取り上げられるなど、注目を集めています。(※)2012年8月22日現在


<執筆者プロフィール>

黒田健二/くろだ・けんじ

大学を一年で中退した翌年、独学で1983年度の司法試験に全国最年少の20歳で合格。1986年より日本及び香港で弁護士実務経験を積んだ後、中国(上海復旦大学法学部高級進修生課程)、デンマーク及び米国(デューク大学ロースクール)で中国法、EC法及び米国法を学ぶ。米国ニューヨーク州弁護士登録後、1995年に黒田法律事務所・黒田特許事務所を設立。(中国、コンピュータソフト、バイオ、環境保護)に特化した弁護士を目指し、中国案件を20年以上手がけている。中国語・英語に堪能で、国際案件および交渉の経験も豊富。黒田法律事務所・黒田特許事務所代表弁護士・弁理士。