前回のコラムでは、競争の熾烈なシンガポール社会をつぶさに観察することで、グローバル化が世界的に進んだ先に待ち受けるビジネス環境の姿を見通した。分業が進み、格差が広がっていく社会では、活躍できる人材とそうでない人材が否応なく決まってしまう。
そこで今回は、シンガポールでいま活躍している第一線級のビジネスパーソンを紹介しつつ、これからの時代に活躍できるグローバル人材像に迫ってみたい。
年収1億円! 実力主義のシンガポール公務員
公務員というと「給料はそこそこで国家・国益のために働く」というイメージがありますが、シンガポールはその限りではありません。
たとえば経済開発庁(EDB)。このお役所は、シンガポールの経済発展に寄与してくれそうな外国企業を誘致したり、それらのために税務インセンティブを与えたりする役割を担っています。
EDBの職員は年齢も若く、非常によく働くことで知られています。
彼らの主な業務は、進出してくる外国企業に対してローカルパートナーを引き合わせたり、事務所や工場用地を紹介すること。ほかの国の役所では、せいぜい一般的な概要を説明する程度で、自ら積極的にそのようなサービスを提供することはありません。シンガポールに進出してくる外国企業にとって、具体的な支援をしてくれるEDBは、窓口ひとつでなんでも相談ができる非常に頼もしい組織なのです。
では、なぜEDBはここまできめ細かいサポートをしてくれるのでしょうか? その秘密は、EDBの人事システムにあります。
EDB職員の給料は、シンガポールの上場企業1000社の社長の平均報酬に連動する形で決められています。
したがって、シンガポールの経済が良くなればなるほど、彼らも多くの給料がもらえるようになっているのです。なかには、年収1億円を超えるEDB職員も存在します。
EDBの人事評価のしくみは成果主義です。それぞれの能力は200以上に分類されたランクにより決定します。また、なるべく若いうちに民間企業で働くことを奨励されており、民間企業で身に着けた能力を行政で活かしたり、行政で身に着けた能力を民間で活かしたりできるのです。
このように、シンガポールの優秀な公務員は、若いうちから民間企業と政府機関の両方で経験を積み、外国企業のトップと対等にわたり合う機会を与えられて、ますます力をつけていくというわけです。